Reason 11 はラックごと プラグインになる

Reason 11 に関する今わかってること

Reason 11は9/25のアップデートで、スタンドアローン版以外にVST/AUに対応するReason Rack Pluginという形で他DAWのプラグインとして動作可能になる予定とのことです(まずはVST3版で、年内にAUに対応予定)。

PropellerheadのサイトにはAbleton Live上でNote Echo, Monotone, Audiomatic, RV7000がラックに収まった形で起動しているスクリーンショットが掲載されています。
ベータ版でいち早く機能を味わうのもよいかと思います(ただしメーカーの指示に従うこと)。
先ほど僕もQueueに登録されて、連絡待ちです。

Rekkerd.orgによるとReason 11 Introが€79/$99、Reason 11が€349/$399、Reason 11 Suiteが€549/$599で、アップグレード版が€129/$129となり、2019年8月以降にReason 10またはReason 10 Introを購入した人はグレース・ピリオド対象として無料アップデートとなるそうです。

先だってのEuropeプラグインはLogic上だと同期が不完全な印象があって、曲のスケッチ時には使っても最終版としてトラックを書き出すときにはReasonごとReWireで立ち上げる必要があったりと、個人的には今ひとつ煮え切らない印象を持ってました。
Rack Pluginって形になってこの手間が不要になるんだったら大変喜ばしい。

気になることなど

Propellerheadの記事ではそれらしき記述が無かったのですが(見落とした?)、Reason 11 As Reason Rack Plugin & Propellerhead Software Renamedによると、

you can use all your favourite instruments, effects (+ Rack Extensions) in any DAW with VST/AU support.

訳:VST/AU環境下であらゆるDAWにおいてすべてのインストゥルメント、エフェクトおよびRack Extensionを使用できる
※下線は訳者による

Reason 11 As Reason Rack Plugin & Propellerhead Software Renamed

とあって、事実なら「RexプレーヤーもUN-16もMatrixシーケンサーもCVマージャーもすべてか!?」ということになり、ますます驚きを禁じ得ません。
ちなみにEuropeプラグイン(VST/AU)はRack Plugin登場に伴いディスコンするそうで。

気になっていること、ベータ版に触れるようになったら確認してみたいことを挙げておくと、こんなとこ。
※ベータ版動作については外部に報告しないよう決められていることが一般的なので、以降の本記事への追記は行わない予定です。

  • 負荷、安定性、同期の正確性
    • ことLogicにおいてはある時期にオートメーションが飛躍的に精密になったものの、ここ数度のアップデートでまた損なわれつつある印象があって、Reasonが誇っていた精密さが阻害されないか心配。
  • オーディオ出力先を分けられるのかどうか
    • インストゥルメントとしてのマルチアウトはできるとして、エフェクトのマルチアウトは聞いたことがない。ゆえに複数のトラックに複数のReasonのインスタンスを起動することになるんでしょうか。
    • そもそもホストDAWからReasonの独特なエフェクターのみを通すという夢のような使い方は可能なのかどうか。
  • 設定がプロジェクトまたはプラグイン設定の形で正しく保存できるかどうか、およびクラッシュ時に復元可能かどうか
  • 背面の配線の仕組みはRack Pluginにおいても健在か(モジュレーションの自由度に大きく関わってくる)
  • プラグインエフェクト、プラグインインストゥルメント、プラグインMIDI制御エフェクト(Logic)の区別がどうなるのか
    • AU対応まで待たないとわからない
    • Ableton Liveだとその区別がないのでスクショや動画では確認できない
    • Reason内のエフェクターのパラメーターをインストゥルメントのLFO等からCV結線するみたいなReasonならではの使い方が、もしホストDAWのプラグインエフェクト/インストゥルメントの区別によって阻害されるようなことがあれば、Reasonの魅力の半分は失われると思う
  • プラグインインストゥルメントとして機能する場合、LogicのMIDI FXは対象を正しくLearnできるか
    • AU対応まで待たないとわからない
  • オートメーションパラメーターは正しくリストアップされるか、そして正しく機能するか
    • Reason内のシーケンサー画面に相当するものがRack Pluginでは確認できないので、オートメーションをどう行うのかは今のところ全くわからず
  • Ableton LiveにおけるAmpのような、OEM的に備わってるモジュールは正常に機能するか
    • Ableton LiveのAmpも、ReasonのAmpシミュもどちらもSoftube製

Logicにおいては先日のアップデートで良くも悪くもサードパーティプラグインの遅延読み込み機能が搭載されたこともあって、Rack Pluginが仮に凄まじく便利であっても読み込みに時間がかかるなら「どうかなあ」と思わされてしまいます。

で、あくまで場末の人間の考えですが、Rack Plugin化は機能の縮小でもなく、VST対応を捨てたということでもないと思います。
結局のところよほどの好事家でもない限り複数のDAWを使う人ってあまりいないと思うんで、Reasonの柔軟な使い心地を知ってもらうために他DAWにスニークする形を考えたんじゃないかと。CV結線って凄まじい機能ですからね。
ただこれと引き換えにRack Extensionのうまみは薄れたかもしれません。
いずれにせよ、Rack Pluginはスタンドアローン版Reasonパッケージすべてに備わっている(ふうに読める)ので、DAWごとReasonにスイッチするんならいつでもどうぞってとこかと。


190828追記
Reason 11: tons of new devices, features, and now it’s a plug-in, too – CDM Create Digital Musicで、少し詳しい情報出てました。

  • プラグインインストゥルメントとプラグインエフェクトとして機能し、内部のパターンシーケンサー以外にシーケンサーを持たない。
  • ReFillファイルおよびRack Extensionに完全対応。内部ブラウザー(あまり好きじゃないが)も搭載。
  • (Reason Rack Plugin外からの)サイドチェーンに対応。
  • ホストDAWからのオートメーションとMIDIコントロールに対応。
  • 複数インスタンスを起動して使用する形式。
  • Rack Plugin外へのMIDIアウトプットには非対応(つまりMatrixシーkンサーからホストDAW内の別インストゥルメントに信号を送ることはできない)。今のところ。
  • オーディオデータをドラッグドロップでRack Plugin内のモジュールに突っ込むことはできないっぽい。

ReWireは昨今のOSレベルのセキュリティ強化の波に乗るのが厳しそうという話題から、Propellerhead(Reason Studio)の苦難の歴史が綴られており、記事は少し悲しげに締め括られていました。

思えば、ようやく自分がPCってものに慣れてきた頃に現れたRB-338で度肝を抜かれ、そのメーカーがReasonを世に出してさらに驚き、その勢いで自主制作のCDアルバムを作成したのがもう20年近く前の話になります。
当時の言葉でいう「クラブミュージック」の制作にあたってこれほど便利なツールはありませんでした。
MOD、ReWireで手軽な共同制作が可能になって捗ったもんですが、MacがOSXになった頃の出遅れで少なくとも自分の周囲からは姿を消しました。
LogicやCubaseなどのDAWを使うとき、個人的には発想が(そのDAWの仕組みによって)縛られる印象があって、そんなときの駆け込み寺として再びReasonに手を出し、スタックのしやすさやプラグイン(モジュール)間の結線という自由さに改めて感激したもんです。
縮小ではないだろうと上に書いたけれども、まあ事実上、縮小かもしれない。あまりに開発カロリーの消費度がすさまじいので縮小とはどうしても言い難いですけどね。
発想の枠をぐわーんと押し広げる仕組みは健在なので、今後もお世話になっていくだろうと思います。

  • 終了: Propellerhead ReBirth – makou’s peephole