ProjectSAM “Lineage Strings Pro”

幅広い用途に向く手堅い製品をリリースし続けるProjectSAMからLineage Strings Proがリリースされています。

サイトをぱっと見たらわかりづらいのですが、フル版に当たる本製品(Pro)が先行して登場で、市場の反応を見てCore版を開発するか検討するらしい。
Will there be a Core Edition of Lineage Strings?
At the moment it has not been decided whether or not there will be a Core Edition of Lineage Strings. If you are excited about the idea of a Core Edition, let us know!
Lineage Strings » ProjectSAM(下部FAQ)
したがってイントロ価格€245,65(定価€289)は、フル版である本製品の価格で、思ったより手頃ってことになりますね。
機能、操作性
今回もNFRをいただけました。細部まで使い込んだわけではないので、今のところの印象をベースとしたレビューとなります。
まず、起動はなかなか重いです。Batch Resaveして劇的に速くはなるものの、読み込むインストゥルメント(nki)によっては多少待ち時間が発生します。
ただ一度読み込んでしまえば、LiveモードとLookaheadモードを切り替えりゃスケッチ用途とガチ作曲用途にすぐに切り替えられるので、ProjectSAMが言うように”オーケストラを使用した曲を作る際のスケッチ用途にも便利”ってのは別段ウソじゃない。
Lookahead機能ってのは、Impact SoundworksのTokyo Scoring Stringsでも似たような手法が採用されているもので、あくまでレイテンシーを犠牲とするものの、入力されたMIDIメッセージをインテリジェントに分析し、レガートをはじめとした最適なアーティキュレーションがリアルタイム(レイテンシーが発生している時点でリアルタイムではないが)で適宜アサインされていくというもの。つまり細々とキースイッチなりアーティキュレーションスイッチを切り替える必要がないわけですね。
余談になりますが、そういうニーズを聞くと確かにKontaktにAI搭載もアリか?と思わなくもないのですが、再現性に疑問符のつく現状のAIをこうした場面に利用するのはあまり信用できない。逆に言うと、DAWにいちど打ち込んだMIDIデータはユーザーがそれをイジらない限り毎回同じ内容として奏でられるわけだから、こういった用途ではAIよりもプログラムで愚直に処理してくれたほうが安心できます(むろんAIに何をどのくらい学習させ、データのどこに着目して成果物を吐かせるかは技術者の設計次第なので、こういった用途でもやりようがあるとは思いますが)。

さて話は戻ってサウンドのクオリティですが、これは全く問題なし。
奏法(アーティキュレーション)のカバー率は正直そこまで高くはありません。が、レガートによるピッチ遷移の速度など、ユーザーによってカスタマイズ可能な余地も多めに確保されている印象があって、自分が扱いやすいように組み立てて自分用のテンプレNKIを保存しておく使い方が現実的なのだろうと思います。
ほかのオーケストラ音源との差し替えが簡単か、つまり操作性に共通項が多いかというと、共通項がないわけでもないが多くもない。つまりVSLなんかと同様、このライブラリーを決め打ちで使うことになるでしょう。その点で考えると、思い切って手を出す前にあらかじめデモ音源をしっかり聞いといて、自分の作風と相性がいいか脳内でシミュレーションしといたほうがよさそう。
最後、操作マニュアルですが、若干内容が散らかっており、インターフェースに備わった機能やメニューがマニュアルで触れられていなかったりします(マニュアル翻訳時にある程度そこは補ったので、Sonicwireから購入される場合は参考にしていただけるとよいかと)。
ちなみにPunchBox 2の記事でも触れましたが、昨今、製品にマニュアルが付属せず動画解説のみのパターンやツールチップで済まされるパターン、あるいはWebベースのマニュアルってのが少し増加傾向あり。いずれ英語解説だろうとスラスラ読めたり聞けたり、あるいは優れた自動翻訳を介して簡単に理解できるようになるとは思うのですが、元の解説が間違ってるケースもちょくちょくあるなど、マニュアル翻訳の狭い界隈はちと穏やかでない空気感があります。
D16 Group “PunchBox 2”