PD Synthesis 来るのかなあ…

PD Synthesis のイメージ

PD Synthesis つまり Phase Distortion Synthesisというのは、一方の波形を他方の波形に作用させる合成方法…それだけだと世の色んなシンセサイザーと特に変わらないのだけど、ちょっと他と違うのは他のシンセがどちらかというと一方の波形の音高や音量などに作用させるのと異なって、言ってみれば波形の形状に作用させる方式であること。
Super Sawのバリエーションの1つとして使われることのあるPWMって、矩形波のプラスとマイナス(0と1というべきなんだろうけど)の比率(duty)をLFOなどの外部ソースをもとに変化させるもの。それと似たような感じで、いわば波形の消費ペースを他方の波形をもとに変化させる。もちろん正確にはもっとややこしいのだけど、超ざっくりと僕のイメージを言葉にするとそんな感じ。
試してみたい人は、Tone 2のNemesisにPDシンセシスの機能が備わっているのでデモ版でも落としてみるとよいかと思います。

WIGGLE

さて、持ってこそいないもののいまだに気になっているWIGGLEにも搭載されている(と思しき)PDシンセシスという方式。
WIGGLEにおいては1つの波形に幾つかの制御点を設定して、その制御点を外部ソースをもとに変化させる仕組み。

2nd Sense Audio “Wiggle”

PD Synthesis の復刻を見たいのか、次代を見たいのか

サウンドとしてはFM音源に近いのだけど、重心が低くなりがちなFM音源に比べると良く言えばライト、悪くいえばチープなサウンドに響きがち。
重低音って、音量に対する効率があまりよくないので、大音量を求める音楽においてFMよりPDのほうが好都合だとはいえます。
その面でWIGGLEがEDMで重宝される日も遠くないかなとは思うのですが、チープに響く感じを払拭するのが一方で難しいのと、FM以上に音のイメージがつきにくくもあります。

Windows上のソフトだけど、SynthPIC2というシミュレーターの操作動画がわかりやすいので貼っておきます。

やはりどことなく地に足のついていない印象のあるサウンドだけど、既存のソフトウェアシンセでこういうサウンドを作ろうとするとけっこうシンドイですよね。
PDというとカシオのCZシリーズで有名で、実は2015年にiPadアプリとしてもリリースされていました(カシオ、往年の人気シンセ「CZ」をiPadアプリで再現:日本経済新聞)。
このCZ Apps for iPadは、動画で紹介されているCZ-101が題材。

CasioのCZシリーズはこういう音。やはりどことなく懐かしい感じは拭えない。

UVIからもCZ系の音源が幾つかリリースされていたみたい。
ただ僕はあまりUVIを信用していなくて、内部的にちゃんとPDで合成する仕組みを持っているのか、それともただ実際のシンセから音をサンプリングしただけなのかはわからない。
また昨日たまたま見ていたらBlack Fridayからの冬商戦というノリで、Virtual CZなるものが半額セールになっているってニュースもあった。

画面上部の評価を見るとコスパは高いようだけども、僕自身がPlugin Boutiqueをあまり信用していないせいもあって「ふーん」という感想どまり。

WIGGLEのデモ版は試したので、PDシンセシスが活かされていることは確認済み。
ディープな作り込みを行おうがチープな音を作ろうが、PD音源を導入することを考えるなら個人的にはWIGGLEを推したいところです(使ったことないけど)。
UVI CameoやVirtualCZよりもプリセットが充実していそうな気配は、何度でも紹介するけど藤本さんの記事(日本ヲタ文化大好き中国人が生み出したまったく新しいシンセ、WIGGLEが画期的だ! : 藤本健の“DTMステーション”)からも感じ取られるので、さまざまな音を楽しめるとしたらWIGGLEのほうがポテンシャルは高いと思う。

流れとしてはどうか

EDMに使われるシンセシスの流れとしてWavetable、そして一歩戻ってFM, PSG(PSGライクといったほうがいいんだろうが、いわゆる8bit系の音色)、そしてその後、いわゆる初期サンプラーっぽい、つまりショートサンプリングの連打みたいな使い方のPCM…と辿るのを僕は見てきました。
その上で、ちょっとPD方式が一般に浸透するのは難しいかなと個人的には思っています。

以下あくまで言うまでもなく私見ですが、たとえばPD方式(の復刻)が放り込まれるのは一時的にFMに注目が集まった時期であるべきだったかもしれません。
それから、FMの下位互換って印象が強いのか、音色制作を趣味とする人(PluginGuruとか)がプリセット音色作成配布にほとんど踏み出さなかった感じがします。いや、探すと本当は大量のプリセットが見つかるんですよ。
あとは昔からテクノポップやニューウェイブ、初期のAOR、初期のゴアトランス辺りで軽いサウンドを担当していた印象が強いのかな、ドクロマークに表象されるジャンル群にPDの音は投入しにくいかもしれません。ロリータ気味のポップスや、ポストチップチューンともいえるGlitch Hopには使いやすいと思うのですが、いずれも自家消費傾向が強いというか閉じた文化の傾向が強いので、広まっても界隈の中に留まるのではないかって気がします。