oeksound “soothe2”
僕にとってはミックス時に無くちゃならんソフトの一つとなってしまったSootheが1/23に Soothe2 へとバージョンアップ予定。
改めてSootheが何をするものかというと、耳障りな周波数成分をピンポイントで検出し(リアルタイムでも)処理してくれるもの。EQよりもっと細かく、もっと大量のポイントを一度に、なおかつその加減がリアルタイムで調整されるので、ミックス/マスタリング時の細かなEQ調整が不要になるというとんでもない優れものであります。基本的には中高域以上の「出過ぎ」を(気付かれないように)下げて耳あたりの良い音にしてくれるもので、したがってぱっと聞きでは効果がわかりません。効果がわかるほどかけると、それは言わばやり過ぎ、ってことになります。
さてSoothe2は全面的に作り直され、周波数レンジの拡張、アタックタイムとリリースタイムのパラメーターの追加、プロセッシングモード2つを追加したほか、MSプロセッシングの追加、レーテンシーの抑制、軽量動作モードの搭載、オフラインレンダリング用クオリティ設定の分離、グラフィック負荷の低減、サイドチェーンインプットの追加と、今どきのニーズに対応しています。
曰く、「前のバージョンリリース直後から、パフォーマンスの向上とお手入れしやすさを目的とした改良版開発をスタートしていて、我々や愛用者のアイディアを盛り込んである」とのこと。
macOSおよびWindowsの、VST, VST3, Audio Units, AAXの各フォーマットに対応していて、新規購入価格が€199、アップグレード価格が€50になります。
適正値の探り方、活用方法
基本的な操作方法
真っ平らな状態でdepthを少しずつ強くしていき、反応を見てください。ある程度反応するようになったらSharpnessを少しずつ上げて、問題のポイントを見つけます。deltaをOnにして、問題のポイントに効いているかどうかを確認し、よけいなポイントにも効いているようなら、そこに反応しないように調整します。sootheのOn/Offを切り替えて、効果が出ているか、効きすぎてないかを確認します。
程よく効くように各パラメータを調整しましょう。
基本的には、ハウリングを起こしてる周波数を探るのと同じ操作です。
基本的には再生時(real-time)の処理をなるべく軽くし、書き出し時(offline)の処理を少し高めに設定することをおすすめします。Studio Oneではラウドネス計測時、計測効率にも影響します。
活用方法
整音に特化したソフトなので、たとえば故意に過剰な設定にするようなクリエイティブな使い方をするのでれば、(おそらく安定した効果を必ずしも生成しないので)別の類似ソフトを使うことをおすすめします。
- オケをミックスバスにまとめてsootheを差し、サイドチェーンにボーカルトラックを指定すること(適宜調整を必要とする)で、ボーカルの埋もれにくいミックスにすることが可能です。
- 複数人数のボーカルを混ぜることで干渉してしまう帯域や音量を削り取ることができます。
- 極端にレゾナンスの効いたシンセや、極端にフィードバックを強めたエフェクトの音量のバラつき、または他トラックへの帯域面での干渉を抑えることができます。
追記
200126追記
2日ほど遅れてoeksoundからメールでお知らせが届き、それに従ってアップデートしましたんで、操作感など記していきます。
もともと極端にoversampleやresolutionの値を高くしない限り負荷がかかることも少ないのですが(これは、thresholdもといdepthを相当抑えめで使ってるため)、既述のように描画における負荷の低減が功を奏しているようで、軽快。比べてみると、前バージョンの描画がやや神経質過ぎたかと思えるほど。
EQはshapeにshelf、band-shelf、notch、tiltとバリエーションが増え、low cut、high cutは6, 12, 18, 24db/octのカーブタイプの選択肢が増えて、各バンドをsoloで聞けるようにもなっています。band-shelfは、iZotope OzoneのEQや、カーブタイプを急峻な値に設定した際のfabfilter Pro-Q3のBellの動作と異なるので少し慣れが必要。
attackとreleaseスピードは単位がわかりませんが、0.1未満(=fast)〜9.9より上(=slow)までそれぞれ可変。
上のスクショで左下に見える「MONO」は、モノラルトラックにsoothe2を挿したために操作不能になっているだけで、ステレオトラックに挿せばLRとMSモードとで切り替えられるようになります。
MSモード時にはMSのbalanceが調整できる、というあまり見たことない設計になっています。
このbalanceはEQ各バンドとも関連していて、さすがにfabfilter Pro-Q3のようにLRとMSを混在させることはできませんが、各バンド個別にLRまたはMSのバランスを設定できるようになっています。
操作中にインジケーター左上部に2列で表示されるleft, rightまたはmid, sideの文字はセレクターではなく単にカーブを表示する色を示しているだけっぽいのが若干紛らわしいですかね。
サイドチェーンはこれ結構わかりにくいと思うのですが、入力値に応じてreductionがかかる形。その極性を逆転させることは不可です(機能を考えるとあまり意味ないもんな)。
ボーカル以外のトラックをサブミキサーにまとめ、soothe2をマスターに挿してサブミキサーからサイドチェーンを拾うといった操作が可能ですし、2ミックスのカラオケトラックでボーカルレコーディングしてそのままミックス&マスタリングしちゃうみたいなコンパクトなプロダクションでも便利に使えるはず。
うちでは、ボコーダーのように聴感と実際のエネルギーとの間に差異があるときに挿したり、ボーカルやアコギのように高域をなるべく活かしつつ抑制したり、中低域が混み合ってるときに少し間引いたり、あとは自分の曲をマスタリングする際に使っています。他人の曲はこれを想定したミックスになっていないので怖くて使えない。
インチキなツールだと宣う海外の某プロダクション系YouTuberの方がおられるようですが、EDM系にはたしかに向かないと言えます。
21/11/10追記 KVRにoeksoundの創立者のインタビューが
- soothing the frequency beast – An interview with oeksound founder, Olli Keskinen (https://www.kvraudio.com/interviews/soothing-the-frequency-beast—an-interview-with-oeksound-founder-olli-keskinen-52369)
今、けっこうあちこちで使われるようになったと聞く Soothe 。僕が知ったのはたしかBobby Owsinski氏のブログでした。当初は、なんじゃこれ?と思ったもんですが。
いまだにボーカル、ボコーダー、アコギ、生ピアノに挿すことが多いかなあ。シンセ音色に挿すことはあんまりないかも。
ハーシュネスを潰すか削るかは悩ましい選択ですが、最近は潰すことが多い(というか戻ってきた)ので、Sootheに頼る機会はちょっと減ったかも。