着メロで作ったもの

つい先日、むかし着メロサイトで購入した曲が僕の曲ではないかと問い合わせが来て、確かにC社に在社した時代に作った曲だとお返事。スマホだと音声フォーマットも違って聞けないけど聞けるサイトがないかってことで、G6.comをご案内しようと思ったらFlashの試聴が出来なくなってました。こういうやりっ放しはホントよくない。
録音したものを送ってもまあ問題ないだろうと思ったんでm4aのファイルで送りました。といっても、midradioで再生させたものなのでだいぶ音色違って聞こえるんですけど。

退職後何年も経ってますし、最近もまたよくしていただいてますんでC社在社時に作った着メロのことそろそろ触れてもよさそうですね。

プロフィールに記したようにもともとバイトで働いてて制作のほうに回り、サイトオープンまでに50曲だかジャンルもバラける必要があるってことで1日2曲くらい作ってたんですね。クラブミュージックは詳しくもなかったのでそこから手当たり次第聴きまくって、よくあるようにテクノとハウスの区別がつくくらいにはなりました。
当初、配信可能なファイルサイズは5,200byte位。MIDIデータと音色データだけだと大したサイズでもないんですが、ADPCMだと1.23秒位で満タンになってしまうので影響ないように無音を削りまくったりします。ベロシティが変わるとデータが大きくなるのでベロシティは統一、ピッチベンドは凄まじいデータサイズになるので控える、MIDIchを分けてデータサイズを抑えるなどして仕上げるわけです。ついでにいうとDLページに表示される文字数も影響するのでそこも文字数削るとか。

そんで、やってる間にユーザーさんからのウケがよかったのを幾つか自画自賛気味にご紹介しておくと、

  • KallingYou:着信音始まりの曲。あとサチらせまくって特有のノイズを出した。
  • FakeJazz:着メロでJazzなんてありますかってリクに答えて作ったオルガンジャズ。
  • GLIM:トランスらしいフィルタの開閉をProgram Changeで何とか再現してみたもの。
  • HELLO:これも着信音始まりの曲。これもフィルタの開閉っぽくした。
  • ★:JPに聞こえなくもないシンセ音が出来たのでダッチトランス作った。
  • 8barsHip:ほぼPCMの断片だけで作った。この手があったかと思った。
  • Lover’sSoul:なんかAORクサいバラードものも作った。
  • OpkomendTij, OpkomendWerken:これはさほどでもなかったけどダッチトランス風便乗策。
  • AIRIHEE:これはMIF名義。ただただ能天気なループで、草創期のツカミとしてはよかった。
  • FAKE☆HAPPY:これもMIF名義。ハピコア的な。
  • オランダ的クリスマス:MIF名義。完全にロッテルダム、ガバを舐めてる。
  • ゼンマイ切れオルゴール:MIF名義。PCM使わずFMでねじ巻き音作ったのと、ねじ巻き中にポツッと1音だけ鳴ったりする現象を再現したので評価高かった。
  • 黄色いイカ:MIF名義。ただの空耳ネタ。完全にガバを舐めてる。

あとポケット効果音の効果音も結構作ってて、下らないネタものがウケてましたね。

  • 除夜の鐘:FMで作った除夜の鐘。一応108回分鳴るはず(再生時間1時間20分位だったか…?)だけど、端末の仕様によっては途中で終わってしまったハズ。
  • ナゾ語:読み上げソフトにただデタラメを読ませただけのものだけど、最後だけ疑問文風に語尾上げしたのにやたらハマってくれたユーザーさんがいた。

効果音のほうは多過ぎてタイトル覚えてないです。おばちゃん系のネタやら、読み上げソフト系のネタ(「〜おじさん」系)は同僚とネタを競い合ってたせいもあって腐るほどあったハズ。

何かの本でも読んだのだけど、一度作ったものでも死蔵にするか再利用できるかで企業価値が決まるのだそうですよ(顧客リストを何に転用するかとかですね;むろんデータサイエンティストなど、そうしたデータを具体的にどう活かすかはキモになりますよね)。ネタものは旬があるから再利用が適策と必ずしも言えませんけど、なるたけタイムマシンに乗りやすくなってると温故知新もしやすくて有難いもんです。

夏に恒例ビアガで旧同僚と飲んだ時、及びその後ソフトの動作チェックにお邪魔した時に、今のC社のあの部署の土台を築いたのが僕だという話になってて、返す返すも他のスタッフの方々に結果的に抑圧を与えることになってしまって申し訳なかったなと思います。思いつくこと片っ端からやってやる的なことを思いながら取り組んでたという意味で自負が全くないわけじゃないのだけど、チームワークとして見ると良からぬ働きだっただろうないう気もしますね。


※以下、140221別記事より移動。

以前どなたかが「ああいう曲を配信サイズに収めるのが謎」という風に仰っていたのを思い出したのでそれについて思い出語りをば。

例えばよく話題に上がる、同じ形状を色変えて使い回すことによって雲と草を表現するスーパーマリオブラザーズのグラフィックみたいな、詰まるところ”人力圧縮”の面が大きいです。
着メロの時もその後ゲームの音源開発に携わった時もそうなのですが、決まった容量に押し込むために効率よく容量削減しないといけなくてですね、圧縮のアルゴリズムがわかったら圧縮されやすい元データを作ってやるとかいったそういった工夫で実現させたデモンストレーションみたいなもんです。

先に少し書いたベロシティですが、容量に影響するのでベロシティ差はなるべく避けます。初期値が127なので1曲通して127のベロシティに統一するのがベスト(同様に初期値で済ませられるケースではセットアップ小節からその項目を抜くことも)。127に設定しておくと、曲の最初のNoteOnのベロシティ差を0にできるため1ノート分稼げます。
強弱のついた装飾音符を表現するにあたって、1つのMIDIchで2ポリのチャンネルリザーブを取って表現するのと、装飾音符だけをあえて別MIDIchに割り振った場合とでは、後者のほうが容量を抑えられます。
PitchbendもどうやらNoteOnごとに発効されるらしくサイズが膨大に増える傾向があったため、昔のPSGなんかだとピッチずらして疑似コーラスかけるなんてことしましたが、着メロの場合はModulationを代わりに使いました。

ダッチトランス系の曲はMIDIエコーを仕込みましたが、ああいう分厚い感じを単純にMIDIエコーさせると途方もない容量になるため、同じタイミングで同じ音程が重なるところは削除するとか、メインが3ポリならエコー部分は2ポリにするとか。
★なんかは削れる限界まで削ったので、MIDIデータの中身の間引き具合が凄まじかったです。ちなみにどうして★なんて曲名にしたかっていうと、これだとタイトルが2バイトで済むから(タイトルも容量に影響する)。
あと★とかその辺りの曲で使ったJPもどきのシンセ音は矩形波(WSで06番)2つ直列してModulator側にAM変調かけたもので、確かModulatorの音量14くらいが一番安定してたハズ。これをたとえばFM8なんかで作ろうとしてもうまくいかないので、着メロのチップ特有の再生周波数やアナログならではの不安定な位相が作用した効果だろうと思います。MidRadioのMMF再生や、ずーっと昔にDTMMagazineに付属したMMFエミュレーターでもイマイチ音が違いましたね。加えて、恐らくMA3以降は再生周波数が上がったようで、MA2でサチらせて作った音が妙竹林な音に鳴ることが多かったです。

ポリ数稼ぐのにハイハットのオープン,クローズとスネアを同じ音色の音程を変えて再現したりとかもしました。
山二つの波形(WSで02番)は唯一FMのFeedback値とModulator側の音量の設定次第で音程によってノイズの音が変わる(MA3以降だと三角波もそれに近い音に出来て、ついでに三角波はModulatorに設定するとレゾナンスの利いたシンセっぽい音を作れた)んで、それとキーフォローを使ってハットのオープン,クローズとスネアをまかなうことが出来たわけですね。この波形は、京劇で使うような小鑼とかBandpassかかったようなシンセ音とかFMらしからぬ音が作れる一方で、unipolarのため歪みを作りやすくスピーカーにもダメージ与える可能性があったため、’それでヒトネタ’以外の場面ではほとんど使いませんでした。
あとMIDIのノートのデュレーションと音色のEGとのバランスでディケイを短くしたり長くしたりしてプログラムチェンジを発効せずに済むように調整したりとか。

PCMデータは先に書いた通り配信可能サイズからすると1.23秒程度が精一杯なので、細かく断裁して組み合わせました。例えばリズム部分のPCMを切り出すにあたって、oxxxoxxoxoxxoxxoをoxxとxで切り出すことでPCMデータとMIDIデータの両方を節約するとかそういうやり方。
あとPCMはベロシティでなくExpressionで音量調整が利くのですが、MIDI CC情報はPCMのNoteOnの10tickくらい手前までズラす必要がありました。
声ネタでも、ものすごく短いノートで再生させると打楽器の音に聞こえさせたりできるので、どうしても容量に収まりそうにない場合はそれを代わりにしたりも。
着メロに限らず多くの場合PCMはサンプルレートそのままで歪んだ音よりも、一度高いサンプルレートで歪ませたものをダウンサンプリングするほうが歪みっぽく聞こえないので、音量を稼ぐには歪むくらいまでマキシマイズかけてから8kHzなり4kHzまで下げてました。ダウンサンプリングの手順は、EQ、Comp等で処理後にダウンサンプリングしてからEnhancer。先に整音しないと特に声ネタ系だとダウンサンプリング時に摩擦音が消えてしまいます。バッチ処理する場合には妥協策としてこの手順にしてました(ダウンサンプリング時に摩擦音が消えるのを仕方ないことと思って下ごしらえみたいなのをしない人が多いことに逆に驚いたもんです)。今聞けるかどうかわかりませんが、効果音サイトで配信していた声ネタ系は私が作業したものとほかの人が作業したものとで摩擦音の聞こえ方がけっこう違います。こういうノウハウを社内でシェアするにあたって、定量的な根拠を示しつつ浸透させられたらよかったんでしょうけど、そういう考えが当時なかったこともあって結局個人差が出てしまったというお粗末。

実際にやったこととしては大体こんなもんですかね。

着メロで作ったもの” に対して1件のコメントがあります。

  1. しだ より:

    makouさん 先日は本当にありがとうございました!!
    HELLOはもう大活躍しており、長年の思いが実りもうラオウの生涯に近い思いです!!

    makouさんが評判が良かったと紹介されていた曲も当時使わさせて頂いていることも思い出し、プロミュージシャンになることを夢見ていた当時が蘇り、懐かしく思えました。

    makouさんの曲に出会え、再会でき、本当に良かったです、ありがとうございました!

    1. makou より:

      >しださん
      メールではありがとうございました!
      お問い合わせいただいた機会に歴史を紐解いてみて、不思議と気持ちが新鮮になりました。
      設定方法は蛇足かと思ったのでご案内しませんでしたが、無事HELLOが鳴ってよかったです。
      うちの自宅にデータがあれば鳴らして録音することも不可能ではないので、もし飽きたらまた別なのをリクエストいただいても結構ですし…。

      プロミュージシャンを目指してらっしゃったんですね。趣味でやる音楽が一番楽しいですよw
      いま私はもう職種が何だかワケわかんないことになってますが、やることやって意外と満足のセミリタイヤ生活を送ってます。

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