ワンノートシーケンスに関するメモ

基本概念と種類

名称の正確な定義が見当たらないので、 ワンノートシーケンス はじめ以下もろもろ便宜上勝手に命名しておきます。
類似したものも含めると仕組みが多岐に渡るので自分用に整理しておこうと思いました。

大まかにはこういう類別をしていいかなと。

アルペジエイター/シーケンサーの動作タイプ
アルペジエイター/シーケンサーの動作タイプ

他にもありそうですが、ひとまず「単音の白玉を弾いたときにどういう内容になるか、和音の白玉を弾いたときにどういう内容になるか」で分けました。
わかんないまま行き当たりばったりで使うのも全然ダメじゃないけど、狙った結果を思い描けているなら、試行錯誤の時間がもったいないじゃん?(試行錯誤してるうちに、思い浮かんだその時点ではサイコーだったハズのイメージがすっ飛んでんのは不毛だもの)
どのモードを搭載したシンセを使うべきかを把握できてる(≒想定する機能を搭載してないシンセを間違って買わない)のが理想的。←「正しい」ではなく「理想的」。

古くからよく言われるアルペジエイターってのは(2)-Bですかね。
(1)-Dや(2)-DはステップLFO(プログラマブル・サンプル&ホールド?)とでもいうべきものでNI AbsynthやNI Massive、XferRecords Serumでのシーケンスフレーズ音色に使われていて、他のと違い、NoteOnは最初の1回だけ、従ってつまり原則的に音程の変化にEGが追従できず独特な結果になります。
独特な結果のうち悪い点を挙げると、ランダムに近いタイミングでグリッチノイズが出やすいことと、ちょっとした問題で同期ズレしたときのリカバリーが難しいこと。

ほかに類別する大きな要素として2点。

1つ目は、弾き始めをシーケンスのスタート位置とする(KeySync)か、小節線に従ってシーケンスのスタート位置とする(SongSync)か。
基本は後者と思いますが、変拍子には対応できずシーケンスパターンがズレることになり、やむなく前者を使用してどうにかします。細かく説明すると長くなるので割愛。
変拍子かつアウフタクトの曲の場合、シーケンス音色使うのは結果的に無茶と言っていいかも(その面倒さを知ってる人は「あれ、どうやってんの?」って聞いてきますがほとんどいません)。
KeySyncの場合、ハネた曲でアウフタクトしづらくなるというか、十中八九無理というデメリットがあります。

もう1点は、個々のシーケンスノートのゲートタイム(デュレーション)がいじれるかどうかで、個々に調整できるものもあれば、一括指定のもの、一切調整不可のものがあります。
先ほど書いたAbsynthやMassive、Serumは別途LFOを追加しないとゲートタイム操作(のような)音色の実現が困難。
とはいっても今どきの人たちは1個ノート置くたびにバウンスインプレイスしてたりするので、さほど苦でもなさそう。

あと細かい要素としては、レガート(後続のノートと連結する)できるかどうか、ハネたビートに対応できるかどうか、ベロシティを個々に調整可能/一括指定可能/一切調整不可かどうか、(1)-Aから(2)-Dまでを演奏中に切り替えたりできるか、コードの転回形(インバージョン)やオクターブへの拡張が可能かといったところ。

それから、上の図に示したように現状、シーケンスに調の縛りを加えられるものを僕は見たことがありません。つまり、メジャーコードにのっとったシーケンスパターンはメジャーコードの箇所でしか弾けない(弾いてもいいけどディスコードしちゃう)ので、もし問題がある場合には、

  • シンプルなシーケンスパターンにしちゃう
  • (2)-Bのモードで演奏する
  • 割り切ってメジャーもマイナーもおかまいなしで弾いちゃう
  • シーケンサーを使わず(またはシーケンサーからフレーズをエクスポートして)スタティックなフレーズとしてちまちま打ち込んじゃう

が関の山かなと。

以上をもとに、手持ちの装備品を簡単にさらってみます。

LogicのArpeggiator

Logic Pro XのArpeggiator
Logic Pro XのArpeggiator

個々のノートのデュレーションも調整できるし、和音と単音を混在できるし、長いシーケンスも作れてよいのですが、多くのアルペジエイターが備えている”個々のノートに対する音程の操作”(端的に言うと、弾いてない音程を鳴らす)が不能。
エクスポートが1サイクルのみってのも便利なようで意外と不便。
またMIDI FXなので、トラックスタックチャンネルへの挿入も不可。

個々のシンセプラグイン内蔵のもの

Sylenth1, TB-303

LennarDigital : Sylenth1
LennarDigital : Sylenth1
RolandCloud : TB 303
RolandCloud : TB 303

分散和音を作るもの((2)-B)としては機能しない。
和音弾くと全ての音程に対してアルペジエイターフレーズ(CHORDモード)が反映される。
ノート長は一括。最大16ノートのループ。

TB-303に関しては機能を再現する以上のことは厳しい。

Omnisphere, Spire, Electrax, Icarus

Spectrasonics : Omnisphere
Spectrasonics : Omnisphere
Tone2 : Electrax
Tone2 : Electrax
Tone2 : Icarus
Tone2 : Icarus

アルペジエイターとステップLFOと両方を搭載したもの軍団。

先日アルペジエイター機能が増強されて、Omnisphereは僕の理想に非常に近いものになってますが、複雑なシーケンスを実現するにあたっては、フィルターの機能がちと上品すぎると思います。もっとエグくてもいい。

Electraxはハネたリズムの解釈にバグがある(まだ直ってない)のと、Icarusもだけど全体的に音が堅いので奥行きのあるというか、ふわっとしたフレーズを組み立てにくい感があります。

Surge, Absynth, Serum

Surge
Surge
NI : Absynth
NI : Absynth
XferRecords : SERUM
XferRecords : SERUM

ステップLFOのみ軍団。Surgeは昨日取り上げたやーつ。
いずれも多重にかけられる面白みはありつつ、しかしながらやっぱりゲートタイムを個別に調整できないのと、NoteOnが最初の1個だけになってしまうことから来る不便さがあります。

AbsynthはSongSync不可。一方、一覧性が高いので結果を想定した作り込みがいちばんしやすいかもしんない。

HALion, UVI

Steinberg : HALion
Steinberg : HALion
UVI : Falcon
UVI : Falcon

重く、(作り込もうとした際の)UIがややこしい反面、レイヤーとなるシンセエンジンの自由度の高さからくる音色の幅はいちばんあるかなという気がします。

まとめ

まとめるうちに何か結論導き出せるかなと思ったけど、なんだかんだ結局面倒というか手間暇かかるという事実を覆すには至りませんでした。悩ましいよ、楽したいよ。
少なくとも、冒頭に記した図が、迷走中のどなたかの手助けになればと思う次第。