Media Overkill “Waverazor”

Media Overkill (愛称”MOK”)の Waverazor なるプラグインソフトシンセがNAMM 2017で発表された。
MOKは、Rob Rampley氏とTaiho Yamada(AlesisのAndromeda、M-AudioのVenomを担当した)氏によって設立された新興のメーカーとのこと。

cf. Behind the scenes of Venom: Sink your teeth in (Part 1) – Inside Out

Media Overkill Introducing New Synth, Waverazor, At 2017 NAMM Show

MOKのYouTubeアカウントにFirst Lookの動画がアップされている。

それからこちらはSonic StateによるNAMMショーでのインタビュー動画で、英語だが詳しい説明を聞くことができる。

所感

歪み要素の強いWavetableシンセっぽいサウンド、武骨でレトロチックなビジュアルが印象的。
Teenage EngineeringのOP-1も発表当初はその武骨な出で立ちで浮世を席巻したものだ。同社の近作PO-32に至っては、それを踏襲した出で立ちに加え、ティーンエイジどころか9歳の女子に書かせたイラストで彩りを与えているという。妙な徹底ぶりがまた話題をさらっている。

Teenage Engineering’s drum synth UI was drawn by a 9-year-old girl

さて、Waverazor の話に戻ると、ぱっと見で「サーキット・ベンディング(circuit bending)という言葉を連想させられた。
これは、既存の電子部品にDIY的に細工を施して楽器として鳴らせるように改造してしまう手法で、SpectrasonicsのOmnisphere 2の音色カテゴリにもその言葉が見えるとおり、それなりに浸透した言葉のようではある。

マニアックながら、これにより他の人がなかなか真似ることの出来ない独特な響きを得ることができる(cf.偏ったDTM用語辞典 – サーキットベンディング:Circuit Bendingとは – DTM / MIDI 用語の意味・解説 | g200kg Music & Software)。
古くからチップチューン好きな人は後を絶たず、擬似的なサウンドを鳴らせるソフトシンセでは飽き足らずにGAMEBOYのサウンドチップから直接自分の音を鳴らすなんてことが行われていたこともあった。実はもう10年以上昔の話だ。

Waverazor のテーマカラーとも言える赤と青のカラーリングから連想されるものがある。
これまたDIYの界隈では古くから名高いMake Magazine誌だ。

赤と青のテーマカラーはDIY界の建国旗みたいなものだろうか。
勘の良い人が「このビジュアルならこんな感じの音が鳴るのだろう」とピンと来る、まさにそういう音がWaverazorからは発せられる。

先程の動画をざっと見る限り、Waverazorは波形を16ステップに分けて一部をリプレイスすることで新しいサウンドを創り出すようだ。
Serumにも似たような機能はある(←スクショ)けれども、使っている人もあまりいないだろう。

Massiveの電子音臭さ、Serumの”低域になるほど劣化が起きてしまう”仕組み、ついでだから〜KillつながりでNOVAkILLというメーカーのWindows用のVSTソフトシンセと比べても、腰の強さがあり、広い帯域に対してシャッキリと発振している印象があって、Waverazorはもっとハードウェア寄りの音響に聞こえる(実際「ん? ハードウェアなのか?」と思ったくらい)。

特許出願中(patent pending)とされる新たな合成手法、その特許内容が合成手法に対するものなのか処理手法に対するものなのか、波形表示の手法に対するものなのかはわからないが、バリッとしたサウンドを聞かせるためにはちょっと期待できるソフトシンセかなと思った。

追記170308:

3月3日にWaverazorの開発元MOKからメーリングリスト越しに告知があった。
曰く、3月1日のリリースをたくらんでいたが機能向上と追加に入れ込みすぎて少し遅れそうだと。
その代わり「待っていた甲斐があった!」と言ってもらえるくらいのものにするから、ちょっとだけ待ってて!とのこと。