Match EQ でクラップとスナップを作ってみる

iZotopeにもMatch EQがあるんですが、久しぶりに純正の Match EQ を引きずり出して使ってみたら意外と奥が深かった。

iZotope "Ozone 9 Match EQ"
iZotope “Ozone 9 Match EQ”
iZotope Match EQの場合、キャプチャさせたあと、対象のトラックにドラッグしてくるのがラク
iZotope Match EQの場合、キャプチャさせたあと、対象のトラックにドラッグしてくるのがラク
iZotope "Tonal Balance Control 2"
iZotope “Tonal Balance Control 2”

Match EQについて簡単に説明しておくと、特定の楽曲やワンショットの音などの周波数分布をキャプチャ(記録)し、それと同じような周波数分布になるように自前の音にEQをかける仕組み。
iZotope製品だとその延長上にTonal Balance Control 2があると考えるとわかりやすいようでしょうか。
最近はMatch EQが必要になることがあまりないのですが、コンピ等で複数の曲を1つのアルバムにまとめる際になるべく周波数分布を近づけるみたいな使い方がかつては一般的でした。とはいえEQでどうにかできるもんじゃないことも多く、それで出番が減ったのかなと思ってます。

以前、AudioThingのHandclapperを真似てLogic純正の機能だけでクラップマシンを作ってみたことがあります。

ES2が発するノイズをMIDI FXのRepeaterを使って連打にしたのですが、あのときはフィルターを使って周波数分布を寄せてました。
フィルターって、フィルター漏れが無くなるほど優秀なのですが、一方でアナログっぽいリアリティが薄れる面もあると個人的には感じていて、シンセのようにEGが絡むのでないならいっそEQで処理しちゃうのが妥当かなと、これが今回Match EQを使ってみた理由。

やってみます。

Logic "Match EQ"
Logic “Match EQ”
今回はArpeggiatorで連打を崩してみた
今回はArpeggiatorで連打を崩してみた
ステレオ感調整
ステレオ感調整

ES2は早めの減衰に設定し、雰囲気を出すためモノフォニックに。Repeaterだとタイミングが整いすぎるので今回はArpeggiatorで少しバランスを崩しました(MIDI FXでプログラム組んでもいいのかも;AlchemyのMSEGだと雰囲気が出なかった)。LogicのArpeggiatorはワンショット設定がないのでループ長を最長に。Sample Delayは左右に5.5msec程度のズレを設定。

Match EQの使い方は、まず元となる音(この場合ES2のノイズ)をLearnさせ、目指したい音(レファレンス)のファイルをドラッグしてLearnさせ、最後にMatchボタンを押す流れ。元が多バンドのEQなので愚直にかけるとフランジングっぽく聞こえてしまうためSmoothingを適度にかけ、必要に応じてApplyの度合いを変えます。
Fade Extremeで範囲指定して部分的にEQをなだらかにすることもできます(iZotopeのMatch EQでも可能)し、ShiftキーやOptionキーとの併用でカーブをマウスで調整できるのが物凄く面白い。特にドラッグしてQを緩くするのは、目立たないながら秀逸。
ちょっとした問題として、たとえば古い音源をレファレンスとすると高域が留守なことが多い。このままMatch EQをかけるとせっかくの高域がごっそり削られてしまうので、高域部分のカーブをマウスで調整してある程度原音ドライ状態をキープできることになります。

だいぶ雑にやりましたが、まあまあ。高域をいじり過ぎて耳が痛い感じのもありますけど、808などのまんまのクラップ音は、存在しない帯域をEQで上げるのが至難の業ですし、手法としてはないでもないかなという感想です。
残念ながらMatch EQ自体は出力音量調整ができずピーキーになりやすいので、Gainプラグイン等で調整する必要があります。うちで試してみたときは18dBくらい下げました。

肝心の問題としては、元素材がないと始まらないとこ。
あと、欲を言えば純正のStereo Spreaderのように分布の伸縮ができたりEGで変化させられるようになってるといいかもしれない。じゃあSpace Designerなどのコンボリューションでやってみたらいいのかと試したんですけど、どうも音がスカスカになって塩梅が悪かった。
結局、細かいことをやろうとするとDAWオンリーでは限界があるので、別途波形編集ソフトを使うなどする必要がありそう。

ちなみに、春先の外出自粛時に暇に飽かせて自分で手を打ったのを多重録音してハンドクラップを作ってみたら、ふつうにイイ出来でした。