各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成

【ご報告】
音色プログラムおよびオーディオファイルはGumroadでの取り扱いになりました。地味に手間がかかっているので有償での配布です。

https://www.makou.com/making-synth-bell-sound-with-software-synth/

非整数次の倍音が高域でキラキラ美しく聞こえてこそのシンセベル音色はJ-Popやアニソン、ファンタジー系のゲームや映像BGMにとって常套手段ですが、ソフトウェア音源でのシンセベル音色はエイリアシング(折り返し雑音 – Wikipedia)対策がうまく施されてないと使い物になりません。

追記:”エイリアシング”、”サチる”と安易にまとめてしまったけど、予期せぬヘテロダイン(ヘテロダイン – Wikipedia)も含みます。

GlockenspielやCelesteなどアコースティック楽器を単品でサンプリングしたPCM音色をおとなしいアレンジの中で使うなら、そうそう問題も起きないんですが、厄介なのは元気な曲でシンセベル音色を使うとき。心地よい余韻を残すためにはポリ数をある程度確保しないといけない、そうすると物理モデリングみたいなソフトだとポリ数の分だけCPUリソースを食いますし、高域でサチったり無闇にピークが振り切れたりするリスクも高まります。
なので、比較的シンプルな仕組みで、エイリアシング対策がそこそこ為されていて、高域が豊かに発音されるソフトを選ぶ必要があるってことになります。
えっ? 面倒じゃね、それ? ああ、面倒さ!

どういうソフトを使ってJ-Popテイストのものを作ればよいかと聞かれることが時たま(地元で)あって、J-Popテイストのものは習作以外めったに作らないのだけどそれはさておき、ソフトシンセごとの音色の得手不得手を考えたら国産のハードウェアPCM音源を使うのがベストだと答えてます。
とまれ色んなスタイルの曲を作らなきゃいけないときにハードウェア音源だと結線を繋ぎ替えるのも面倒。あるいは雇われの人はハードウェアの購入申請が必ずしも通るとは限らないし、姑息でも都合よくシンセで作れんもんかというのが今日の話。

Reason 純正

Reasonはエイリアシングを起こしにくいわりに高域がかなりド正直に発音される非常に優秀な音源なので、ベル音色だけのために使用することもあります。

Subtractor+UN-16

“Reason Subtractor” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック8。 ジャンル: Soundtrack

ポリ数がMax99で超軽量、コントロール部にプルダウンメニューが無いのに全ての選択肢が画面に収まっている視認性の高さ。パフォーマンスとしても90点あげたい。20番以降の波形がポイント。
ただ僕としては、Reason起動時にイグニションキーが必要になって以降アップデートしてないし、よほどじゃなきゃ起動しません。我が家ではなかなか不遇の扱いを受けています。

Reason Subtractorを利用したシンセベル音色の例
Reason Subtractorを利用したシンセベル音色の例

Thor

“Reason Thor” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック9。 ジャンル: Soundtrack

中域を弾いたときにオクターブで聞こえるように組みました。余韻がdiffusionとして散る感じはマルチオシレータで作ったのでリバーブも不要。ただイチから作るのはそれなりに時間かかるので75点。パッチとして幾つか自前の音色を作っておきたいところですね。使用頻度はSubtractor同様に少々哀れ。

Reason Thorを利用したシンセベル音色の例
Reason Thorを利用したシンセベル音色の例

Live 純正

Operator+etc.

“Live Operator” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック7。 ジャンル: Soundtrack

金属っぽい音色が得意とされるFM音源ですが、アンチエイリアスかけてもサチる(サンプリング周波数を途轍もなく上げたらどうなるかは不明)ので30点。しかたないのでGrain Delayでdiffusionを付け足してみましたが、金属的なゴージャス感には程遠い印象。

LiveのOperatorを使用したベル音色の例
LiveのOperatorを使用したベル音色の例

Collision+etc.

物理モデリングを得意とするApplied Acoustic System製のCollisionを使用(Chromaphoneにあたる)。合成精度を下げたMembraneでdiffusionっぽく。アタックと高域の強さを制御するシンドさを考えると60点といったところ。

LiveのOperatorを使用したベル音色の例
LiveのOperatorを使用したベル音色の例

Logic Pro 純正

Logicの純正音源はサチりも多少あるんですが何かこう、尻の重い休日のお父さんのような音です。

ES2

“ES2” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック2。 ジャンル: Soundtrack

基音が出しゃばって、なかなか倍音をおいしく見せてあげることができず。Max16ポリですし、キラキラには向かず、裏メロを任せるなら…。15点。

Logic ES2を使用したシンセベル音色の例
Logic ES2を使用したシンセベル音色の例

Sculpture

“Sculpture” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック3。 ジャンル: Soundtrack

物理モデリングによる負荷の心配と、Max16ポリという謙虚さ。EnsembleとSpace Designerを噛ませたお蔭で華やかさや美しさはありますが、ポップさに欠け10点。Logic純正の音源やエフェクトでdiffusion効果は出しにくいですね…。あ、AUMatrixReverb試してなかった。

Logic Pro XのSculptureを使用したシンセベル音色の例
Logic Pro XのSculptureを使用したシンセベル音色の例

RetroSynth

“Retro Sound (Analog)” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック4。 ジャンル: Soundtrack
“Retro Sound (FM)” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック5。 ジャンル: Soundtrack

4種類確かめるのはシンドいのでWaveTableとFMのみ。ほぼエレピ音色といった感じですが特に工夫しなくても高域が出しゃばる(むしろLPFで抑えてる)上、あまりサチりもないので65点くらいじゃないでしょうか。逆贔屓目というかふだん使いのハンデか、音が硬い印象はありますけども。

Logic Pro XのRetroSynthのWaveTableを使用したシンセベル音色の例
Logic Pro XのRetroSynthのWaveTableを使用したシンセベル音色の例
Logic Pro XのRetroSynthのFMを使用したシンセベル音色の例
Logic Pro XのRetroSynthのFMを使用したシンセベル音色の例

Alchemy

“Alchemy” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック1。 ジャンル: Soundtrack

PCMは使わない約束なのでVA音色で。
悪くはない。ただ、一枚ガーゼを隔てたような曇り感、音域によってがぜんサウンドが変わるのがネック。50点ってとこですかね。VA音色同士干渉される仕組みだともう少しラクだと思うんですが。

Logic Pro XのAlchemyを使用したシンセベル音色の例
Logic Pro XのAlchemyを使用したシンセベル音色の例

Lounge Lizard 3

“Applied Acoustic Systems Lounge Lizard 3” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック11。 ジャンル: Soundtrack

純正ではありませんが、ここで少し異色な方法を。
Chromaphoneと同じメーカーのエレピ音源Lounge Lizard。Logic純正のEVPではできない、エレピ本体のfork(ベル音色)のみの発音で、かつ内蔵エフェクトで加工しシンセベルっぽく使うことも可能という。HammondでPercussionだけの発音にしてMarimbaっぽく奏でるようなもんですね。なお、Releaseがきかないので、Decayの設定とCC#64のSustainとを組み合わせて制御する必要あり。バリエーションをあまり出せないので55点か。

Lounge Lizard 3を使用したシンセベル音色の例
Lounge Lizard 3を使用したシンセベル音色の例

Tone 2 Electra 2

“Tone2 Electra2” (Makou 「各種ソフトシンセでシンセベル音色を作成」より) リリース日: 2015 トラック10。 ジャンル: Soundtrack

最後はまたサードパーティ。満点ではなく、80点くらいですが、起動が早い+制御しやすい+音抜けがいい+すぐ作れる(←慣れたので)って理由で最近よく使ってるTone 2 Electra 2です。

Tone 2 Electra 2を使用したシンセベル音色の例
Tone 2 Electra 2を使用したシンセベル音色の例

長い記事になるとは思いませんでした…。
最後に書くことじゃありませんが、想定していたベル音色はRolandの音源でかつてよく聞いたFantasia(参考)やStaccHeavenなる、中音域だと尖りがなく暖かみがありつつ太すぎない、高音域だと耳に痛くない程度に抜けがよく甘い金属打撃音を伴ったリリース長めのサウンド。いや、これを両立させる音をぱっと作るにはまだだいぶ経験が必要そうだと思いました。


と、書いてやっと気付きましたが、この手のレイヤー音色っぽいサウンドを好むのは30半ば〜40代かも。それより若ければたぶんDigi-bell(わかるかな…卓球さんじゃないよ)みたいな真っ直ぐな音でも上手く音楽に使っていくでしょうね。