【Serum】 Slap House 調のベース音色を作る

今年に入って見かける Slap House というジャンル。
Pluck音色風のガツッとしたアタックと程よくゴリッしたベース音色で、イタロ気味なフレーズで引っ張っていくような印象を持ったわけですが、どんな塩梅で音色を作っていったらよかんべかと久しぶりにSerumをいじってました。

方法論としては過去記事同様、芯となる音色を決めてキツめのアタックを加える感じかと。

用意されてるWavetableを使ってもいいんですがお試しで自分で作ってみます。

Squareを選んでGRIDを42にしてFilterをかけ、GRIDを1にしてかすかにノイズを加えた
Squareを選んでGRIDを42にしてFilterをかけ、GRIDを1にしてかすかにノイズを加えた

右下に小さくGRIDと書かれてる下(スクショだとsign(x)と書かれた右)のプルダウンからsingleのsquareを選び(鉛筆で書いてもいい)、GRIDを42くらいにして中段やや上のSingleというメニューからFilterを選ぶとわずかに上の帯域が削れます。元のままの波形だとヌケが良すぎてやかましいので削ったってとこです。
次にGRIDを1にして、左端のメニュー最下段のノイズマークを選んで波形表示部分をドラッグし、適度に汚してやりました。芯の音はひとまずこれでいきましょう。

奥行き

このままだと淡白過ぎるので少しふくよかに。

Unison発音で味付け
Unison発音で味付け

SerumはデフォルトでRANDが全開、つまりこの波形のどこから始まるかがランダムになってしまい、パンチにバラつきが出てしまう可能性があります。一方、RANDが0だとユニゾン発音時にフランジングが起きてしまうんで、ここではPHASEを250°、RANDを50とし、波形でいうと少なくとも後半の+の値から波形が始まるようにしました(そこまで神経質になる必要もないんですけど、手法としてアリですよの例として)。

アタック

独特のアタックを加える方法は幾つかあるんですが、今回は過去記事でも取り上げたピッチを使う手法。

急激なピッチ変化でアタックを出す
急激なピッチ変化でアタックを出す

ENV2(LFOをENVモードで使っても可)でちょっぱやの減衰エンベロープを作って、オシレーターのCRS(Pitch Coarse)にパッチしてやると、歪んだキックのようなアタック感を得られます。
音量に大きく影響を与えずにアタックを出せる上、キックの低域が通る帯域をむやみに潰さずにすむので便利な方法。
バスドラを自前で作ったり、808ベースを作ったりする際にも使われます。
微調整が必要であればMatrix画面でいじっていくことになります。
もちろんこれで完成じゃありませんが、基本工程としてはこんな感じかなあと。

調整要素

ここからは好き放題に調整していきます。

ゴリッとしたレイヤー音色を作るなど
ゴリッとしたレイヤー音色を作るなど
ローは削り気味に
ローは削り気味に
Matrixはこんな具合
Matrixはこんな具合

Kickstartかませてポンピングもさせてみるとこんな音になります。ヘッドフォンせず作ったので雑ですが。

Note(Serumの画面だと右下部分)からのパッチングをフィルターの拡張パラメーターと、FXのほうのフィルターのパラメーターにつなげてます。

他にできる調整手法としては、Noiseオシレーター(というかサンプラー)をワンショットモード、キーフォローモードにしてキックの波形を同時に鳴らすとか、ピッチにかけるEGをフィルターやエフェクトにかけるとか。
プラック音色と違って、鳴らす音域が低いのでWavetable方式だと高域がカスカスした感じになりやすい点は要注意。Serumの場合はFormulaを活用することで高域の劣化を防げないこともないのですが、面倒なのでやめmしょう。
基本的にそこまで複雑な作り方でもないので、いっそSerumである必要もないですね。

Logic "ES2"
Logic “ES2”
NI "Massive"
NI “Massive”
vladg "Limiter No6"(フリー)
vladg “Limiter No6″(フリー)
Reason Rack (上半分)
Reason Rack (上半分)
Reason Rack (下半分)
Reason Rack (下半分)

MassiveのはVladislav Goncharov(vladg)のLimiter No6をデフォの値でチャンネルにインサートして天井叩きました(他のコンプ/リミッターだと入力を絞らないと音が荒れてしまった)。Reason RackはThorとEuropeをレイヤーして、OTTをかなり緩めの設定にしてインサートしました。
曲調やキックの帯域に合わせてさらに適宜調整が必要だとは思いますが、まあまあですかね。

余談

初めてSlap Houseのベースを聞いたとき、Spectrasonics Trilianを真っ先に連想しました。

Spectrasonics "Trilian"
Spectrasonics “Trilian”

Quirkyというカテゴリーに幾つか、この雰囲気に近いものがあって、特にCS-80のRing Modを使った音がこの場合には好み。
このRing Modってのは早い話、元の音のピッチを上げるのと下げる現象が同時に起きるようなもんで、Ring ModにちょっぱやのEGをルーティングすれば、ピッチにEGをかけたのとまた少し違うアタック感が得られます。
似たような手法でピッチ上げ下げを同時に行なった音色が、亡くなられたLyle Maysがよく使っていたフルートの音色や、D50のブラスの音色(RaveやEurobeatの音色といったほうが通りがいいんだろうか)。とかいう説明をしてしまうと誤解を与えそうですが、自分の頭の引き出しにはこのカテゴライズで収納されてます。