歪み系のエフェクトに強い(と思われる)LVC-Audioから マルチバンド対応のサチュレーター/クリッパー、 Clipped MAX がリリース。
クリップレベルの調整(MASTERと連携)、M-Sでの調整、マルチバンドでの調整、マスターでの調整と大きく分けて4つのモードに分かれていて、これらの処理順序を変更することも可能。
見た目の地味さに反して、かなり多機能です。底力がありそう。
最近のプラグインエフェクトは当然のようにオーバーサンプル機能を搭載することが多く、Clipped-MAXにおいてはOFF, Minimum-LQ, Minimum-HQ, Linear-LQ, Linear-HQの5つのモードを用意していて、マニュアルによると、
Although the linear phase process is the most commonly used procedure for oversampling, there are some unintended consequences other than latency. Although the phase is not altered, slight “ringing” effects can be introduced, especially on transient signals. This is a side-effect of linear phase filtering and cannot be avoided. Minimal phase filtering does not have this side effect.
Minimal phase filtering only has a few samples of latency and does not produce any ringing side effect. The trade-off with linear phase oversampling is that minimal phase filtering introduces some phase shifting. This is most notable above 10 kHz. These phase shifts are the same as is introduced with any standard analog or digital EQ. If there is a scenario where the outgoing signal from Clipped-MAX is mixed with the incoming signal (e.g., parallel compression), minimal phase filtering will produce obvious frequency loss where the phase shifts occur.
概訳:一般的なのはLinear Phaseだがトランジェント部で意図せぬリンギングを生じることがあり、これを抑えるのがMinimal Phaseである。Phase-shiftは起きてしまうが、10kHz以上に現れるものであり、既存の製品でも同様に見られる。仮に問題が起きるとしたら、処理前後をミックスするような技法において特定周波数にロスが生じ得るって場面だろう。
Clipped-MAX – LVC-Audio
とのこと。この先、他のソフトでも同様にオーバーサンプリングのモードが加わるとしたら、この現象と各メーカーの対応について見ておく必要がありそうですね。
それから、このオーバーサンプリングの倍率には2x, 4x, 8x, 16x, 32x, 64x, 128xと異様に高い数値のものが用意されています。128xともなるとバウンスでもしないかぎり効果を確認することもできないですね、うちでは。
マニュアルではClipped-MAXで実装されているクリップのアルゴリズムについても非常に丁寧に解説がなされています。
これらはMASTERの処理に主に影響を与えますが、マルチバンドの処理でも幾つか使えます。
これからバリエーションが増えたり、場合によっては仕組みごと買い取られて他社製品に組み込まれる可能性もあるかしれません。
実際の出音に関していうと、仕組みはどうあれ「聞き覚えのある歪み方になる」といえるので、理論派でなく感覚派であっても問題なく使えるだろうと思います。
「歪み」という言い方をせざるを得ないのですが、いわゆる入力過多を利用したミキシングの良き参謀として導入するのもいいんじゃないでしょうか。