Logic Pro : Track Stack 周りの動作

記事中には多々書いてきた Track Stack ですが、改めて1つの記事として活用法と注意点などをまとめてみます。
まずはじめに概要図として、フォルダスタックとサミングスタックの違いを示しときます。

概要
概要

フォルダスタック

管理用のハコとして

見やすいグループ化、省スペースの狙いでフォルダスタックを使うことができます。
後から新たにトラックをドラッグしてフォルダスタックに追加することもできます。

(1)トラック群を
(1)トラック群を
(2)まとめて選択しTrackStack化
(2)まとめて選択しTrackStack化
(3)フォルダスタックに
(3)フォルダスタックに
(4)このようにまとめられる
(4)このようにまとめられる
(5)MixerではVCAとして管理される
(5)MixerではVCAとして管理される

Logicにはこれと別にフォルダ機能がありますが、お世辞にも管理しやすいとは言いづらいし、何より視認性が低いのでいずれ消える機能と思われます(昔のデータを開けるようにと機能が残されてるが、いずれ何らかの機能に統合されると予測)。
ただし後述しますが、複数トラックにわたるリージョンのフォルダ化は視認性低いものの、単一のトラック内でフォルダ化するとたとえば中途半端な長さのオーディオリージョンをループさせやすくなるなど大きなメリットがあります。

(6)フォルダ機能
(6)フォルダ機能
(7)フォルダトラックにまとめられる
(7)フォルダトラックにまとめられる
(8)フォルダリージョンをクリックすると下の階層で中身を確認でき、上の階層に戻るには矢印ボタンをクリック
(8)フォルダリージョンをクリックすると下の階層で中身を確認でき、上の階層に戻るには矢印ボタンをクリック

折り畳み時に表示されるリージョンは実体ではない

フォルダスタックのトラックは折り畳むとリージョンとして表示されますが、これは表示上のもので、リージョン長を変えることはできませんし、ハサミツールでカットしても想定と異なる結果になることがあります。またドラッグコピーやエイリアスリージョン化は可能ですが、実際にはフォルダの中身をそのままドラッグコピー、エイリアスリージョン化するのと同じ操作となります。
またフォルダスタックを折り畳んだ状態でイベントリストを表示した場合、(おそらく)フォルダスタック内の先頭のリージョンのイベントリストが開きます。
フォルダスタックを折り畳んで表示されるリージョンをバウンスするとVCAチャンネル(下記)としてバウンスされ、リージョン名はフォルダスタックの先頭のリージョン由来となります(バグというか、想定外の操作かもしれない)。

VCAとして

スクショの(5)に記した通り、ミキサー上ではVCAとして扱われます。後から新たにトラックをフォルダスタックに追加した場合もVCAが割り当てられます。
フォルダスタック(VCA)でのリージョンオートメーションはボリュームのみで、ソロ、ミュートはトラックオートメーションでコントロールする必要があります(または、フォルダスタックでなくサミングスタックを使用する)。
ただし、外部インストゥルメントなどVCAの対象とならないトラック/チャンネルを含めてフォルダスタック化操作を行なった場合、選択したすべてのトラックでVCAが割り当てられないことがあります(バグかも)。

フラット化後の状態

フォルダスタックを解除したとき、各トラックはVCAに割り当たったままとなります。

サミングスタック

レイヤー音色制御用として

(1)同様にTrackStackを選んで
(1)同様にTrackStackを選んで
(2)サミングスタックを選んで
(2)サミングスタックを選んで
(3)外部インストゥルメントは後からサミングスタックに組み入れることができる
(3)外部インストゥルメントは後からサミングスタックに組み入れることができる
(4)Sumというトラックでまとめられる(外部トラックはミキサーでは見えない。代わりにオグジュアリートラックでReWireを選んで組み込むことは可能)
(4)Sumというトラックでまとめられる(外部トラックはミキサーでは見えない。代わりにオグジュアリートラックでReWireを選んで組み込むことは可能)

僕が多用するのはこれで、手法として単純で、できることが多いぶんサミングスタックは活用しがいがあります。
フレーズにバリエーションを付けるためにイジる箇所が散り散りなのが難点ですが、自分なりにルール化すれば混乱することもないでしょう。
Logic 9でも似たような手法はMIDI エンバイロメントを通じて可能でしたが、レイテンシーが発生してしまい実用的ではありませんでした。

言うまでもなく、オーディオトラックを組み込んでもレイヤー音色としては機能しません。単なる混在となります。

(5)SubのトラックにMIDIリージョンを作成すると、MIDIインストすべてが鳴る
(5)SubのトラックにMIDIリージョンを作成すると、MIDIインストすべてが鳴る
(6)個々のトラックをオフにしたいときはMuteボタン(On/Offは不可)
(6)個々のトラックをオフにしたいときはMuteボタン(On/Offは不可)
(7)個々のトラックのトランスポーズなどはトラックインスペクタで
(7)個々のトラックのトランスポーズなどはトラックインスペクタで
(8)個々のリージョンで鳴り方を変更させたり、オートメーションをサミングスタックに書き込むのもOK
(8)個々のリージョンで鳴り方を変更させたり、オートメーションをサミングスタックに書き込むのもOK
(9)個々のチャンネルストリップにMIDI FXを挿すのもOK
(9)個々のチャンネルストリップにMIDI FXを挿すのもOK

フラット化後の状態

サミングスタックを解除したとき、各トラックはOutputがBusに選択されたままとなります。

ミックスバスとして

上のような外部インストゥルメントのほか、マルチチャンネル、マルチアウトプットのMIDIインストゥルメントを使用した場合や個々のトラックに(サイドチェーンを含む)複雑なエフェクト処理を施している際にはややこしくなりますが、(MIDI FXを除く)ほぼ全ての操作がサミングスタック上で行えるため非常に効率よく作業できます。
ただしこれはサミングスタック内の各トラックに一括処理をおこなうのではなく、サミングスタック(ミックスバス)単体に対して処理を行うことになるので、各トラックとサミングスタックとに対してどんな処理を行なっているかは自分が覚えておく必要があります。場合によっては処理がかち合ったり、辻褄が合わなくなるケースもあるため、あらかじめミックスバスに何を指定するのか設計を考えておくほうが無難です。
上のスクショ(8)のようなリージョンオートメーションは、仮に個々のトラックがオーディオトラックであってもサミングスタック上にMIDIリージョンを作成して書き込めるため、瞬時に音量やパンを変更するようなオートメーションや、瞬時にエフェクトを切り替えるような操作も低レイテンシーで実現できます。

(10)サミングスタック上でMIDIリージョンを細切れにしてリージョンオートメーションを書いた状態
(10)サミングスタック上でMIDIリージョンを細切れにしてリージョンオートメーションを書いた状態
(11)フォルダ化して処理をループ
(11)フォルダ化して処理をループ

なおかつ、それらのMIDIリージョンについてはエイリアス化したり、フォルダ化(前述した従来のフォルダ機能は、単一のトラック内で扱うと便利)してループ状態にするなど、かなり奇抜なこともできます。これを利用すれば、ややこしいオートメーションでも1サビ、2サビで共有した状態で編集できることになります。
ただし、リージョンのエイリアス機能はまれにアサイン状態がおかしくなることがいまだにあるので、曲全体が極端に複雑な場合には避けたほうがいいかもしれません。

FXバス(センド)をメインウィンドウに表示し、サミングスタック化し、リージョンオートメーション化することでディレイやリバーブを瞬間的にまとめてミュートするような操作も可能です。
以前までのLogicではレイテンシーが発生してキレイにミュートされませんでしたが現バージョンではほぼレイテンシーが発生しません(長時間悪戦苦闘しながら作業したときにゴミが残ってレイテンシーが発生することはあります;Logicの再起動をお勧めします)。

なお、既にサミングスタックが存在する状態でFXバス(センド)を追加した場合、サミングスタック内にFXバスが生成されることがあります。
メインウィンドウではデフォルトでFXバスが表示されず、この状態はミキサーでしか確認できないため、おかしなアサイン状態になっていないか時々気にしてあげたほうがいいと思います。

入れ子(nesting)について

サミングスタックを入れ子状態にすることは現バージョンでは不可。Ableton Liveでは可能。
ただし、サミングスタックをフォルダスタック内に入れることは可能です。