Logic Pro : 10.3 新機能

フラットデザインっぽくなり、色味がLogic Pro 9まで逆戻りした、 Logic Pro X 10.3 。

概要

MacBook ProでTouch Barをサポート

  • タイムライン概要でプロジェクト全体を一目で確認、移動可能
  • 選択したトラックのSmart Controlの調整で音源やエフェクトのサウンドを微調整
  • ピアノの鍵盤またはスケールモード付き音楽キーボードを使用してソフトウェア音源を演奏/録音
  • ベロシティとノートリピートを制御中にドラムパッドをトリガしてビードを作成
  • カスタマイズ可能なキーコマンドのセットを使用して、よく使うショートカットにアクセス

インターフェイスをアップデート

  • インターフェイスが明るくなり、様々な照明状態で文字の読みやすさが向上
  • 新たに24色が追加されたカラーパレットでリージョン、トラック、およびノートにラベル付け
  • すべてが表示された状態のままにできる横方向の自動的な拡大
  • 新しいリージョン編集ではトリミング中のオーディオファイル全体に波形を表示

オーディオ制作

  • “代替トラック”を使用して、トラックのリージョンおよび編集の異なるプレイリスト間での作成と切り替えが可能
  • “選択ベース処理”を使用して、エフェクトプラグインの任意の組み合わせを選択したオーディオにレンダリング
  • 本格的なステレオパンにより、ステレオ信号のより正確なコントロールと個別の操作が可能
  • 複数のリージョンに同時にフェードを適用
  • 64ビットの集約エンジン
  • 192の追加バスを使用

追加機能

  • “GarageBandに送信”オプションにより、iPhoneまたはiPadからiCloud経由でLogicプロジェクトへの新規トラックの追加が可能
  • MIDIプラグインを使用してプラグインパラメータを独創的にコントロール
  • ソフトウェア音源をサイドチェーンソースとして直接割り当て
  • MusicXMLファイルのインポート

ビジュアル

Logic Pro X 10.3 "について"画面
Logic Pro X 10.3 “について”画面
Logic Pro X 10.3新機能の説明画面
Logic Pro X 10.3新機能の説明画面
Logic Pro X 10.3テンプレート選択画面
Logic Pro X 10.3テンプレート選択画面
Logic Pro X 10.3 サウンド・ライブラリーも一応確認
Logic Pro X 10.3 サウンド・ライブラリーも一応確認
Logic Pro X 10.3 作成済み曲を開いてみたところ
Logic Pro X 10.3 作成済み曲を開いてみたところ
Logic Pro X 10.3 64ビットの集約エンジンはここで設定
Logic Pro X 10.3 64ビットの集約エンジンはここで設定
Logic Pro X 10.3 カラーパレット
Logic Pro X 10.3 カラーパレット
Logic Pro X 10.3 プログレスバーはトランスポートに表示されるようになった?
Logic Pro X 10.3 プログレスバーはトランスポートに表示されるようになった?
Logic Pro X 10.3 タイムライン概要は新しいMac Book Proで見られる(via 7 ways Logic Pro X 10.3 once again redefines modern music making on Mac | iMore)
Logic Pro X 10.3 タイムライン概要は新しいMac Book Proで見られる(via 7 ways Logic Pro X 10.3 once again redefines modern music making on Mac | iMore

個々に見てみる

オートズーム

すべてが表示された状態のまま」というのが何を言ってるのか意味不明だが、メイン画面右上に追加になった横方向の自動縮小ボタンのことを指す。

Logic Pro X 10.2.4での自動拡大縮小ボタン
Logic Pro X 10.2.4での自動拡大縮小ボタン
Logic Pro X 10.3での自動拡大縮小ボタン
Logic Pro X 10.3での自動拡大縮小ボタン

リージョンの”影”表示

Logic Pro X 10.3 リージョンの尺を変更する際に中身が表示されている
Logic Pro X 10.3 リージョンの尺を変更する際に中身が表示されている

リージョンのトリムや尺変更時には、リージョンの中身がうっすら表示された状態で行えるようになった。

代替トラック

Logic Pro X 10.3 「代替トラック」はこのメニュー
Logic Pro X 10.3 「代替トラック」はこのメニュー

曲丸ごとのバリエーションを保管できる代替バージョンが以前のアップデートで備わり、今回のアップデートではトラックレベルでのバリエーション管理ができるようになった。
代替トラックがOnになると、トラック名の箇所がプルダウンになる。
代替バージョン機能が備わった際、バージョン管理が非常にラクになっていたが、何かの拍子に「見つからない代替バージョン」みたいな事態が発生して、場合によっては全てのバージョンが開けなくなるというとんでもないバグが起きることがあった(救出方法は既述)ので、今回の代替トラック機能もあまり現段階では信用しないほうがいいかと思う。

選択ベース処理

選択ベース処理」の機能は英語での説明だと”Render any combination of effect plug-ins to a selection of audio using Selection-based Processing”と記されている。

We’ve all been there. You want to apply an effect but the track is long and the process arduous so you hit the button, go get coffee, and count on it being done by the time you get back. Well, now you’ll have to own your own coffee excuses, because Logic Pro X can do selection-based processing.

That means you can apply any combo of Logic’s own effects and third-part effect plug-ins to any selection of one or multiple audio regions. Fix that pesky problem area or just try out some create sound design. Then get your coffee when you’re done.

– 7 ways Logic Pro X 10.3 once again redefines modern music making on Mac | iMore

要は処理待ちの無駄な時間を省くもの。
どこにこの機能があるのか一昼夜探したが、Logic 10.3 can now do selection based processing of plugins – Gearslutz Pro Audio Communityによると、オーディオリージョン(MIDIリージョンも対応しているようだが?)選択中に機能メニューで適用してやることができるとのこと。
たしかにCubase, Studio Oneでは既に備わっている機能だ。 Pro Toolsにもあった気がする。

Logic Pro X 10.3 選択ベース処理
Logic Pro X 10.3 選択ベース処理
Logic Pro X 10.3 選択ベース処理の設定画面
Logic Pro X 10.3 選択ベース処理の設定画面

サイドチェーンソース

Logic Pro X 10.3 サイドチェーンソースの選択
Logic Pro X 10.3 サイドチェーンソースの選択

Drum Kit DesignerにせよDrum Machine Designerにせよ、これまでTrack Stackを用いたドラムのトラックはBounce In Placeしにくく、サイドチェーンのソースに選びにくいという設計上の齟齬があったのだが、今回のアップデートでサイドチェーンのソースがオーディオトラックに限定されなくなったため制御しやすくなったのではないか。
また下のスクショのように、Busの状態がリストに記されているのも有り難い。

デュアルモノ

Logic Pro X 10.3 ステレオインサートエフェクトの後ろに別途デュアルモノでエフェクトを挿せるようになったようだ
Logic Pro X 10.3 ステレオインサートエフェクトの後ろに別途デュアルモノでエフェクトを挿せるようになったようだ

プラグインにデュアルモノの設定が加わり、MSに分けた処理も可能になった。
これは予想外でなかなか面白いかもしれない。

その他

cf. Logic Pro X 10.3 release notes – Apple Support

「終了」が早くなった(たしかに以前はおそろしく遅かった)。

Alchemyの安定性の向上および数々の機能追加。詳細は割愛する。

Pitch BendをMIDIドローで書き込み、制御点間が補間されるのがわかりにくかった(リストエディタでは制御点しか見えないが、ステップエディタでは補間されたものが目視できた)。このためリストエディタ内で制御点を消去しても補間部分だけが残ってしまうバグがあったが、修正された。

プラグインのバイパスをオートメーション操作する際、これまではプラグインの挿入されたスロットを移動するとオートメーションを手動で書き直さねばならなかったが、スロットの移動に伴ってオートメーションも自動的に書き換わるようになった。

「設定の複製を使った新規トラック」ボタンを⌘クリックすると、トラックに含まれるリージョンも込みでトラック複製されるようになった。

Producer Kitを使ったDrummerトラックはTrack Stackの仕組みになっていて、それなのにキャラクターを変更するとシングルトラックに置き換えられてしまっていた。今回のアップデートで、Producer KitはProducer Kitのまま保持されるようになった。

Flexのトランジェントを編集中にUndoすると、これまではトランジェントが失われてしまい、オーディオファイルの取り込み直しからやり直す以外に復元するすべがなかったが、今回のアップデートで修正された。

テイク、コンプの中でコピペができるようになった。

Logic Pro X 10.3 プラグイン画面
Logic Pro X 10.3 プラグイン画面

MIDIエクスポート時に、エイリアスやループ中のMIDIデータも含まれるようになった(従ってStudio One等で Pitch Bend等の妙な補間が起きなくなる)。

特殊な文字の入ったAAF, OMFファイルを正常に読み込めるようになった。

ProToolsから書き出されたオーディオファイルにテンポ情報を書き込んだ際、ホワイトノイズのバーストになってしまうことがあったが、修正された。

プラグインウィンドウは白いフチで囲まれるようになっている。

その他、気づいたこと

Logic Pro X 10.3 ベロシティ設定スライダー
Logic Pro X 10.3 ベロシティ設定スライダー
Logic Pro X 10.3 ピアノロールのメニューに「音符ラベル」が増えているが用途不明
Logic Pro X 10.3 ピアノロールのメニューに「音符ラベル」が増えているが用途不明

ピアノロール画面のインスペクタでのベロシティ設定スライダーはこれまで、たとえば120にしたいのに値が滑って121になったりして、神経質な自分にとってイラつきの元だったが、いくぶん値指定しやすくなった気がする。

ピアノロールの画面の表示メニューに「音符ラベル」というのが加わったが、新機能の説明に解説がなく、何事も起きないため用途が不明である。

個人的な見解として。
これまで追加された機能はいずれも有用なのだが、Appleのサイトでの更新概要が淡白なため有用性が掴みにくく、新しい機能へも辿り着きにくい。
せっかくQuick Helpの機能が備わっているのだから、新しいメニューにカーソルを合わせたら説明が記されるとかやってくれないもんか。
なるべく本サイトでも新機能の活用方法を取り上げていければなあと思う。