LinPlug “Spectral”

LinPlugの開発停止を伝えた先の記事の追記で、特価となったSpectralが代理店経由だと定価販売になっていると記しましたが、その後どうやら特価に切り替わったようで、この機会に購入し、もうほんの少しだけレビューすることにします。

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Spectralの帯域を見てみたくなった

LinPlug Spectralのソノグラム(参考程度)
LinPlug Spectralのソノグラム(参考程度)
Fxpansion Strobe2のソノグラム(参考程度)
Fxpansion Strobe2のソノグラム(参考程度)
Spectrasonic OmnisphereのPCM音色のソノグラム(参考程度)
Spectrasonic OmnisphereのPCM音色のソノグラム(参考程度)
RevealSound Spireのソノグラム(参考程度)
RevealSound Spireのソノグラム(参考程度)

96kHz環境で幾つか手持ちのものを鳴らしてみたレンジを見てみたら(音色がそもそも違うし、ソノグラムだけで判断できることも限られているので参考程度)、先述の如くたしかにレンジが広くて活用に期待できると思ったのだけど、特記すべきは(ソノグラム見てもわからないけど)44.1とか48kHzで鳴らしたときの音質が、上に挙げたStrobe2やSpireよりもナチュラルな点。
ただしこのSRCがLogicによるのかプラグインネイティブなのかわからないので、これ以上の憶測は控えておく。

Spectralのサウンド感とエフェクト

Additive合成できる
Additive合成できる

オシレーターは2つのAdditive波形をクロスフェードでき、エディットモードでAB各波形を調整できる。
AbsynthやSerumに備わった同様の機能では各ハーモニックの開始位相を調整できたが、Spectralではできないっぽい。
Absynthや、Additive合成である程度有名なDiscoDSP(サイトが消えてしまっているので、ここも開発業務を終了したかも)のVertigoに比べると、SerumやこのSpectralはレスポンスが非常に速い。
CPUへの負荷の面ではSerumに及ばぬものの、上記のようにサウンド感がナチュラルなのは、ガチ業務に使うものとしてはとてもよい。
Bendした際の波形の歪み具合から察する限りは、ジャギーにならないよう高い周波数をうまくカットオフしてるんだろうと思う。わかんないけど。

Serumにおけるリリース音の処理
Serumにおけるリリース音の処理

先ほど触れた負荷の面。
Serumもそうだが、やはり多重和音やリリースの残る音の処理で負荷がガッと上がるようだ。
ちなみにSerumで、EGのリリースを大きくしたとき同じ音程を連打すると、前の音のリリースを切り上げて次の音が鳴るモノフォニックになるのだが、右の図のようにPreferenceでチェックを外すとリリースが残るようになる。
細かいことだが、キリッとしたEDMらしさを出すにはチェックが入っているほうがいい。

内蔵エフェクトは比較的多彩で、自由に組み替えが可能。
プリセット音色は全体的にリバーブやディレイなど空間系エフェクトへの依存度が高く、これを切るとがぜん味気のない音になってしまう。音作りのポテンシャルもガタ落ちする印象がある。
またリバーブやディレイに、今わりと標準で付属するローカット機能がパラメーターとして付いてないので、使うとモッサリした出音になってしまう。
CrusherのDividerというパラメーター、PhaserのDepthとFeedbackの異常な強さ、FilterのMod Rate, Mod Depthなど、レトロ感がやたら出るオイシイ部分もあって、総合的に見ると今っぽいジャリジャリしたサウンドを作るより、どちらかというとレトロシンセを今っぽい見た目で作れるものと考えたほうがいいかもしれない。

出力がでかい

買って初めて使ったときに音の大きさにビックリしてしまった1位はこれまでSpectrasonics Omnisphereだった。Spectralはほぼ同等。
Spectralの内部で音量調整してもいいし、今どきのDAWならDAWのフェーダーでもいいんだろうけど数dBくらいは下げたほうがいいかも。

負荷高め

LinPlug Spectralを2台とXferRecords Serumを1台で鳴らした負荷
LinPlug Spectralを2台とXferRecords Serumを1台で鳴らした負荷

たびたび触れた負荷について、ざくっと打ち込んで再生中の負荷をスクショ撮った。
Macのスペックはだいぶ余裕あるはずなのだけど、音色によっては処理スレッド1つ食い潰してしまいかねないので、スペックが控えめなPC上で複数立ち上げて音楽を作っていくのは少し無謀かもしれない。
サクサクとしたジャンルの音楽ならSpectralで多少負荷がかかったってかまわなそうだけど。

まとめ

老舗がその蓄積を思うぞんぶん形にしたものとしては充分かなと。
結果、遺作のようなものになってしまったが、遺志を(勝手に)汲んでここぞという場面で投入したい。