iZotope “VocalSynth 2”

発売前のVocalSynth 2 の告知動画を見た限りでは変わり映えせず、見栄えだけ変えて毎年更新料をくすね取る例の手法に遂に手を出したかと思ってしまったのですが、紹介動画を見るとかなり大幅な機能改良を加えた様子であることがわかります。
操作感など例によっておべっか抜きで書いていきます。

iZotope VocalSynthを使ったささやき声変換
iZotope VocalSynth
iZotope VocalSynth 2
iZotope VocalSynth 2

VocalSynth 2 紹介動画と補足

Biovoxというのが新たに加わったり、Neutronとのインター・プラグイン・コミュニケーションが可能になったり、Anemoneスタイルと称するビジュアルでバランスを調整できるようになったり(初期設定で変更できる)、負荷の軽減等が行われています。
付随エフェクトにはコーラスとリングモジュレーターが加わってますね。
一応説明をしておくと、リングモジュレーターってのはLFOで音量を増減するエフェクトで、LFOのスピードが遅ければ素っ気ないトレモロとして、LFOのスピードが20〜40Hzより速ければそれが新しい音として元音声に対して合成され、機械や宇宙人っぽい声に様変わりします。
もっとも、LFOはLow Frequency Oscillatorの略なので、その周期が2kHzとかになってしまうともはやLowでも何でもないんですけどね。

インター・プラグイン・コミュニケーションについては、残念ながらウチはNeutron 2へのアップデートを見送ったので確認できないのですが、上記動画プレイリストの7つ目の動画で見られるように、Neutron 2のヴィジュアル・ミキサーを使って音量や定位を簡単に調整したり、Tonal Balanceを使ってインター・プラグイン・コミュニケーションに対応したトラック同士の帯域を調整して各トラックで効率の良い帯域分布状態を作り上げられる仕組み。
仕組みとしては非常に便利で思い通りの音に仕立てやすいのですが、極端なこと言っちゃえば下手な歌が上手くなるようなものでもないので、一定レベルの音作りができる人が使うのが理想と言えます。

小さな気遣い:サイドチェーン解説画面

おやっ?と思ったのが、サイドチェーンモードに現れる解説画面。
紹介動画ではLogicが用いられていて、ほんの一瞬現れるサイドチェーン解説画面もLogic準拠で示されているためLogicシンパかよと早合点してしまいそうですが、実はこの部分は使用中のDAWに応じた解説が示されることになります。興味深い配慮です。
なにせ、それなりに経験積んでてもサイドチェーンの接続って混乱しやすいですからね。
一般的なVocoderのプラグインでも、キャリア信号側のインサートに挿すものとモジュレーター側のインサートに挿すものとがあったりしますんで、こうして示してもらえるのは有り難い。

Logicでの解説画面
Logicでの解説画面
Cubaseでの解説画面
Studio Oneでの解説画面
Studio Oneでの解説画面
Cubaseでの解説画面
非対応ソフトでの解説画面
非対応ソフトでの解説画面
Liveでの解説画面
Liveでの解説画面
Reasonでの解説画面
Reasonでの解説画面
Reaperでの解説画面
Reaperでの解説画面
5/25現在、非対応時に示されるガイドのURLは404なのだけども。
5/25現在、非対応時に示されるガイドのURLは404なのだけども。

「買い」か…?

面白がって使うにはちと難しい代物かも

ニーズを感じない人にとっては手に余りそう。
今回の大きな改良の1つ、イージー・セッティングとアドバンスド・セッティングの2枚構造において、イージー・セッティングは充分にわかりやすいUIになっているものの、ごく一般人リスナー視点からすると5つのエフェクトの効果が堪能できるものではないし、加工にあたってBiovoxらしさ、Vocoderらしさを曲の作り手がビシッと出せない限り、おそらく1曲飛び道具として使ったらそれで出番がおしまいになりそう。
もちろん使いこなせるOR使いこなす意気込みがあるなら買っちゃえば?と思いますけども。

完成度OR再現度、そして問われる応用力

正直なとこ、完成度は高いが再現度を求めるなら少し違う、と思います。
たとえばTalkbox部分の解説動画を見るともはや実際のTalkboxでは困難な音になってます。
それがダメってんじゃなくて、Talkboxの再現度を狙うなら別な製品をお求めになったほうがいいですよと。
Talkbox的アルゴリズムを用いた新しいサウンドを求めるなら全然アリです。

アルゴリズムを用いた新しいサウンドとして、Compuvoxを用いたシャウトというかグロウリングボイスを生成する好例が紹介動画6つ目の2分あたりのところに示されています。

以前まったく別なミックスHOWTO動画でこの手のシャウト/グロウリング/スクリーミングを作り出す方法が示されてましたけども、これで簡単に作れるなら手間要らずで大変よいですね。
ちなみにボーカロイド初期の頃、デスボイスを作るってんで、20Hzのスピードに設定したフランジャーを2枚重ねて使うってのがありました。

こうした「応用」「活用」を生み出す計り知れない可能性はVocalSynth 2に十二分に潜んでいると思われるので、一通り紹介動画、英語でわかりにくいかもしれないけど、見た上で導入を検討し、挑んでみるのがいいんじゃないかなと思いました。
以上、あくまで個人的な見解でした。