Initial Audio “Sektor”

Initial Audio の Sektor。

結論を先に箇条書きで。

  • 機能は充分に揃ってるが、少々慣れにくい部分も
  • キツめの音の迫力を損なう音質(190705追記:1.3betaのアップデートで少し高域が持ち上がった気配があります)
  • プリセットの音量差が気になるが、完成度の高い音もあり
  • 独特なステレオ感

キャンペーン中だとしても90%OFFはやり過ぎじゃ…?
メーカーサイトおよびPlugin Boutiqueでも43%OFFくらいですよ。
ちなみにセールは6/9まで。時差があるんで、サイト上のカウントダウンを確認のこと(このカウントダウン、初めはウザいと思ったけど、時差考えると便利だな)。

質感はスーパーサブモブ

Wavetableの長所でも欠点でもある高音域と低音域での質感の違い、これを緩和するためにおそらくアンチエイリアスが機能していると推測しますが、パッド系の音色に美しくかかる一方、強い音色の迫力を損なっている気がします。
従ってWavetable音源の代名詞といえるいかつさを求めるには向きません。Serumとは違うものと考えたい。
エフェクターにDistortionがあるものの、ハリより汚さが勝つ古い歪み方なので、Sektorのみでメインを張る強い音を作るのは厳しいです。

※ちなみにモブは日本語だと村人A的な意味だけど英語だと暴徒の意味になるので、さすがに今日の記事のスラッグにmobの文字は入れてません。

SektorのBrowser画面
SektorのBrowser画面
SektorのEffector画面
SektorのEffector画面

もう一点、チェック時にマスタートラックにImagerが入っていたせいもありそうですが、それでも「あれ?」とヘッドフォンを外してみたことはこれまでなかった。ヘッドフォンの外から音が聞こえたのです。
おそらくアンチエイリアスと音源内蔵のリバーブの兼ね合いによる産物かと。
ということは、良くも悪くも他のソフト音源に埋もれ過ぎない、かといって前に出そうと思っても出てこない。「モブ音源」と書いた核心はココで、主役になれないものの助演としては侮れない存在感ということ。
関連でもう1点。ユニゾン発音機能によりSuperSawも容易に鳴らせるのですが、これもバリッと前に出てきません。EQでなく質感の問題。また中央定位が強めに残るので「OSC+」機能で調整する一手間が必要になります(Omnisphereだとそれもできないのでユニゾン発音はたいがい諦める)。
負荷はだいぶ軽く、(軽い内蔵音源がきっちり動くことで定評のある)Reasonでの動作を求める声もあります。

ここ最近うちの日記でちょくちょくHALionのオルタナティブたりうる音源について記していて、これは偏にAudioUnits環境でのロード時間の長さによるところなのですが、先日古いCubaseをアンインストールして以降「待たされた挙げ句ロードに失敗する」ストレスフルな環境になっていて、けっこう真剣にオルタナティブなもの探してましてね。
折よくそれに相当するシンセに出会ったとも言えそうです。
位置付け的にはSERUM代替ってよりHALionの代替という感じ。ならば日本の音楽には向いてるかも。

紹介動画のコメ欄をざっと流し読みしたところ、お手製のWavetableの読み込みには対応しているとのこと。
また機能追加/向上に積極的な雰囲気も感じ取れるので、破格のセールでゲットしておいて将来のアップデートを待つという手もあるかも。

美味しいとこと致命的なとこ

短くまとめるつもりだったのにイジってるとポツポツ気になったので、残り、細かい部分をざっと。

SUB OSCはノイズ未対策

NoteOn、NoteOff時にプチッてノイズが出て非常にマズい。
Amp EGが全OSC共有なのでOSC A, Bでイイ感じの音にできてもSUBで台無しになります。
SUB OSCのみ特別な処理を加えるべき(下部の追加ADSRでどうにかできる?)。

SAMPLE再生は美味しい面もあるが

MASSIVEやSERUMのNoiseに相当するSAMPLE再生は比較的充実してます。
ただしLoopは波形全体に対するもののようで、PCM音源のようには使いにくい。Multi Sampleのカテゴリの音色はLoopモードにしてもループしないっぽい。
なおSAMPLEは、フォルダを見るとignitexという謎の拡張子のファイルもありますがカスタムのWAVファイルにも対応。Sektorを再起動後リストが更新されます。Multi Samplesの仕組みは不明。

追記:ignitexですが、うちの環境だとizotopeのRXでのみ開くことができました(サンプリング周波数は22.05kHzと表示)。手間はかかりますが、1つずつRXからコンバートしていけば他のソフトでも使うことはできるかもです。中身はflacなのかなあと思いますが、定かじゃありません。

Colourのノブはデフォルトが50%になってますが、50%以下は何故か一緒。設計ミス?

SequencerとTrance Gate

SektorのSequencer
SektorのSequencer
SektorのTrance Gate
SektorのTrance Gate

細かいゲートタイムの調整はできないものの、Sequencerと、エフェクターのTrance Gateは活用すると色んなことができます。
Trance GateはTone2のElectraX同様にエフェクターのくくりになっていて、パターンを自作できます。

コスパ?

なので、すごく率直に言って、(開発費用がかかるのはわかるけど)本来の価格では性能に対してちと高過ぎの印象があります。
90%はやり過ぎとしても個人的には半額で「ペイ」ってとこで、だから今のタイミングなら入手してもいいかもしれん、という感想になります。くれぐれもSerumと同等のものとは思わないこと。
やっぱりMassiveやSerumの与えた「Wavetableはいかつい音を出すためのもの」って固定観念を負かすのは難しそうです。もともとそうでもないのに。

さて、もう1通NFR提供の連絡来たので、明日、いや明日以降レビューします。この調子だと本来の仕事が進まないので、いずれもっと手を抜きます。