Impact Soundworks “GameVerb”

Impact Soundworks “GameVerb”

SNESVerbなるマニアックなリバーブもリリースしていたImpact Soundworksから、おそらくそのアルゴリズム込みでPSX、N64のリバーブ挙動も真似られるGameVerbがリリースされています。

SNESVerb: Retro Game Console FX | Impact Soundworks
Experience the faithful emulation of the faux-reverb effect from the classic 16-bit SNES video game console in this plugin by Impact Soundworks.

基本的にはチップチューン系ミュージックに携わる人がターゲットになるかと思いますが、DSP技術が今ほど成熟していなかった頃の、金属っぽさの残る独特な残響をもしお求めであれば、選択肢に加えていただいてもいいかなと。

情報

  • Windows, macOS対応
  • VST3, AU, AAX, CLAP
  • 定価$49、イントロ価格

機能と操作性

スタティックなエフェクトとして使用してもいいのですが、パラメーターが比較的多く、昔と違ってオートメーション等を通じてダイナミックに値を変えられる(動画を見る限りIRでなくアルゴリズミックと思われる)ので、昔風だが一味違う表現も可能になるでしょう。

あと、面白いと思ったのは入力チャンネルにMIDのみを指定できること。出番がどれだけあるかわかりませんが、このギミックはこの先このデベロッパーの製品に何らかの形で活用される可能性があります。

実際の出音と制御性については動画でご確認ください。減衰感など、かなり再現度が高い印象。

ちなみに製品ページに見える「DigiFu」というのは、Redditによるとこういう意味です。3年前にはこの概念が成立していたっぽい。

Digital Fusion Music

Digital fusion is music that combines various musical genres with early PC/computer music styles that were shaped by hardware limitations, such as video game music, demoscene/tracker music, chiptune, and MIDI. Digital fusion is an evolution of these computer music styles, where composers have adopted their vernacular without their original hardware limitations (taken from https://www.digifumusic.com/)

Digital Fusion Music

認証コードが通らないなど少々トラブってましたが、NFR(評価版)をいただきました。

上に記したとおりで3種類のリバーブユニットの動作を期待通りに再現してくれます。
当時のゲームコンソールのDSPユニットは、現代からすれば低いスペックの中で、かつゲームの本編の処理に支障ない処理負荷に押し留めながらも最大限の効果を発揮するように、サウンドプログラマーが最適設定をあくせくと探るものであり、一言で言えば非常にクセの強いものでありました。適当にイジってもイイ音が得られるものではない(ディレイベースのエフェクトを使ってて特定の周波数でハウリング起こしやすいと考えると連想しやすいかも)。
このソフトはそこまでシビアな動作をしない(とは思う)のだけど、「らしさ」は最大限に再現されています。マニアックな調整も可能。

リバーブのリアリティという点では、そんなわけで、現在のリバーブエフェクトに及ばず、ゲームで使用するにしても土管リバーブないしショートエコーとして響きます。ゆえにスペクタクルな内容のゲームに音楽面でも迫力を加えようという意図に土台そぐわないと言えるでしょう。
なので逆に土管リバーブありきの内容のゲームを開発するなど、そうしたサウンド面の仕様に対する理解力や工夫がプロデューサーやゲームデザイナーにも問われたと言えますね。

それはそれとして、じゃあこれを今どういった音楽スタイルに対して活用すればよいかというと、少なくとも汎用性はないに等しい。Lo-Fiというにはまた少しベクトルが違い、チップチューン系というには、そのまま過ぎ(駄目というのではない)。
なので、いま書いたような、このエフェクトありきの音楽スタイルなり局所的なギミックとして、あるいは前衛的な表現として導入の可否を検討するべきかなと思います。