Serenade III 鳴らすメモ

ネット上であんまり情報が見られなかったのでメモ残しておきます。
Serenade III は、Chet Singerによって2012年(古い!)に公開されたReaktor用のライブラリー。
Silverwoodのシリーズもですが、生楽器の表現をどうにかソフトで実現する独自の設計は”巧緻”という他ありません。
わかりやすさとモノラルであること以外、何の文句もなく、100点満点でも400点あげたいくらい。
言うまでもなく物理モデリングなのでサンプルの読み込み時間が無く、PCのディスクスペースを心配する必要もなし。ゆえにDAWのソングファイルの起動も早い。そしてとどめ、🌟フリーウェア🌟。
昨年2月にとっくにMPEにも対応済み(Serenade 4 MPE | Entry | Reaktor User Library)。

Serenade | Entry | Reaktor User Library
Serenade | Entry | Reaktor User Library

1月にこの日記でARCHÉ COLLECTIONのこと書いて(結局国内の代理店はどうなったのか;たぶんフックアップさんだと思うけど)、あれも物理モデリングでしたね。
クオリティ的に遜色ないというか、ARCHÉ COLLECTIONはピックアップで拾った音に近く、こちらはマイクで拾った音って感じです。

ARCHÉ COLLECTION イカす! – makou’s peephole

鳴らすまで

Reaktor右上のⓘを有効にしておけば、各設定項目にマウスオーバーで小さなヘルプ出ますが、具体的なマニュアルはどうやら無いようなので、鳴らすまでのプロセスをざっと書きますね。

Serenade | Entry | Reaktor User Library
Serenade | Entry | Reaktor User Library

右上のBodyのバイオリン2種、ビオラ2種、あとはチェロとコントラバスからお好きなものを選択。
このままだと画面上の弓をマウス(OSCコントロールでもいいけど)で動かすことでしか音が出ず、MIDIで打ち込むにはどうしたら…?ってなります。
左下のGestureのSourceでデータ入力方法を設定するのですが、

  • Panel Only : 初期状態。画面上の弓をマウス等で動かして発音、強弱を制御。
  • KB Gate : NoteOnとNoteOffと、マウス等での制御。強弱は別の方法。
  • Mod Wheel : KB Gateを拾いつつ、CC#1(Mod Wheel)の値変化を弓の制御、強弱として使う。
  • Pitch Whl : 同様、Pitch Wheelの値変化を弓の制御、強弱として使う。
  • Foot Pdl : 同様、CC#4(Foot Control)の値変化を弓の制御、強弱として使う。
  • Volume : 同様、CC#7(Volume)の値変化を弓の制御、強弱として使う。が、DAWによっては誤動作の可能性があるのでお勧めしない。

なので、打ち込み方としては大体このような感じで、値変化が弓の速度に影響する少し独特な方式。Silverwoodとも違います。
Logicの場合、Control+Optionを押しながらオートメーションカーブを調整でき、特にオートメーションカーブを左右にドラッグすることでS字状にして滑らかな抑揚表現が可能(Ableton LiveだとOptionドラッグだったかな。S字はない)。
曲調によっては制御点が大量に必要になってきますが、得られるものも大きいので頑張ってみてもよさそう。アレならオートメーションをTouchで入力していくのもまたよし。この場合、Recじゃなく再生しながらでOKだけど、できた!って後にオートメーションをReadに直さないと、せっかくうまくいったものを上書きして消しちゃうおそれがあるので注意。

超ざっくりパガニーニ(S.141 パガニーニによる大練習曲)
超ざっくりパガニーニ(S.141 パガニーニによる大練習曲)

ここではMod Wheelを弓の制御に扱い、弓のアップダウンは超端折ってあります(というか、技巧目当ての曲で弓の動きまで真似るとDAWが処理し切れなくなる懸念もある)。

ああ、Friedlander Violinがもう要らなくなりましたね(当サイトのレビュー)。
しいていえば、打ち込んでる最中に音程を聞いて確認できないのがネック。この点は、仕方ないので他の音源でいったん打ち込んでこっちにMIDIデータを移すことで手を打ちましょう。

その他の設定

右下のCrossoverというのは、音程がいくつ離れたら異弦扱いと捉えるかということ、つまりレガートの可否を決める音程(インターバル)のスレッショルド。
いちばん左下のLift On StopはNoteOff以降の弦の残響を短くするものと考えるとよいかと思います。声でいうと「あ。」と「あっ!」の違いになります。

それから予備情報として、DAWによるとは思いますが、特にフレーズの冒頭ではNoteOnより少し早めに弓動かしたほうが、アタックが強く出過ぎるのを抑制できてよさげ。
もしあれならステップエディタを利用して特定のCCだけオフセットを前にズラしてもいいのかも。試したことないから上手くいくかわからない上、特に今回は弓の制御に関わるため発音タイミングに影響出るのもどうかとは思いますが。

特定のオートメーションだけオフセットを調整する
特定のオートメーションだけオフセットを調整する

その他の細かい設定、たとえばポルタメント(スライド)のOn/Offや速度、ピチカートのOn/Off(ピチカートの音はけっこう嘘くさい)など明示的なパラメーターは、ノブを右クリックしてMIDI Learnを選んでから目的のControl Changeパラメーターを入力してやれば、以降そのControl Changeで動かせるようになります。ReaktorのEditで設定してもいいけど。

MIDI Learn
MIDI Learn

画面のノブ及び弓以外はコントロールできないので、特殊奏法までは網羅されてません。人工ハーモニクスくらいなら頑張ればできるかもですが。

入力機器を活用してやるとこの動画のようにジェスチャーで演奏可能になるわけですね。