ボーカルのノイズ例

実例あるといいかなと思ったので、幾つかスクショで例を示します。

ボーカル

ノイズ例01
ノイズ例01
  • 赤:リップノイズ、舌(ツバ)のノイズ → ざらつきのある縦線として帯域を問わず現れる。
  • 緑:モニタヘッドフォンからのリーク(音漏れ) → 中域辺りに、他の要素と重なる形で現れる。
  • 青:アクセサリーまたは時計の針の音 → 広い帯域に、他の要素と重なる形で現れる。

英語詞(または一部の日本語)の単語末の子音(get, beat, kick, pop, love, with)は一見ノイズに見えますが消したらダメです。
こういう処理を行うにあたって歌詞テキストは必要不可欠なので必ず受け取っておきます。

英語が得意でない日本人の英語歌詞は、特に単語末の子音を飲み込んじゃったりしてよくない場合が多い。なので補正として音量を持ち上げつつ高域をブーストしたり、あまりに聞こえない場合は他から持ってきて移植する必要があります(後述)。

消したい場合は、RXシリーズならDe-clickかVoice De-noise、あるいはGainで下げます。一般的な波形編集ソフトと違って処理箇所の前後でわずかにフェードを挟んでくれるので、安心してお手入れしてください。

ヘッドフォンリークは、歌の音程がしっかりしている人なら無視してもかまいませんが、Melodyneでガシガシ直さなきゃいけないレベルの人ならMelodyneの処理の邪魔になるのでDe-bleedである程度消しちゃったほうがいいかもしれません。
そもそもヘッドフォンリークが起きやすい状況でレコーディングに臨んではダメ。髪の長い人は後ろで髪を縛って耳を丸出しにし、ヘッドフォンで密閉しやすくする必要があります。当然、ジャラジャラいうアクセサリーは外す必要がありますし、歌うときにリズムを取るためにどこか叩きながら歌うのもなるべく避けるべき。

機器の何らかのトラブル

ノイズ例02
ノイズ例02
  • 白:イキみによって鼻が鳴っている箇所(気になるようなら直す) → 低い帯域にしゃくる形で現れる
  • グレー:アタックが重複してる箇所。基本的には直せない。 → 途切れ際が汚れて現れる。
  • 赤:きわめて目立ちにくいが、子音箇所で高域に一瞬ぴりっとした音が鳴る。前後を聞いて気になるようなら直す。 → 狭い帯域に汚れとして現れる。

まれに、マイクの状態やコンプ、プリアンプの設定とボーカリストの歌い方との相性が合わなかったときに、子音と母音の境目にアタックが2つ出てしまうことがあります。違和感ないように音量を調整してなじませますが、オケと合わせて聞いて気にならないようなら無視してOK。

RXシリーズならDe-clickで設定値を調整するか、Gainを使って修正します。どういう状態かによって臨機応変に対応します。

喉の状態など

ノイズ例03
ノイズ例03
  • 赤:リップノイズだが、同じ高域に集中して出現するのでマイクの特性と思われる。ミックス時にEQで処理してもいいが、コンプ強めの収録状態だとミックスでのEQ処理じゃ限界があるので、この段階で処理しちゃう。 → アタック時に子音の帯域外に裂傷のような形で現れる
  • 白:イキみ。オケと合わせて聞いたときに気になるようなら修正。 → 低い帯域に縦線で現れる
  • 黄色:ノドのイガイガ。RXの場合はブラシで消すか、倍音ツールとドラッグをうまく使って消して、美声に。 → 倍音のすきまに現れる。

体調や年齢は声に影響が出やすく、上の例は花粉症の影響が出ちゃったケース。
ツールを使うのは最後の手段か、100%のものを120%の出来にするときです。70%を100%の出来にしたところで感激するのは本人とご年配の方だけです。

英語の発音ミス

発音ミス例
発音ミス例

ノイズとは違いますが作業が必要になるものとして、英語発音ミスの例。この例では、赤が入りまくり。
s,t,dなどの子音は他から移植してどうにかできますが、母音は音程が絡んでくるので、正しく発音されている箇所をピッチ補正かけて移植します。とんでもない労力です。
赤い四角はリップノイズ。

率直にいって英語が苦手なら諦めたほうがいい。レコーディングって記録に残すことだから、黒歴史になるだけ。

大事な基本的な話

いいマイクで、いいスタジオで録る。
大変結構ですが、いいマイクで、いいスタジオで録ると、喉の状態や歌の拙さがより顕著になります。またたとえば手で膝を叩くなどしてリズムを取りながら歌うと、その音も全部拾われます。
何故いい環境で録るのか、改めてちゃんと考えてからレコーディングに臨みましょう。

ついで

Melodyneに関しても、ほんの少しだけ触れておきます。ただし、これは「自分はこうしている」ってだけであって、こうするのが正解って話ではありません。

  • Melodyneの基準周波数を442Hzにする(オケが440のとき)。オケとぴったり合わせると、オケに埋もれる可能性が高くなるから。フラットよりわずかにシャープ気味のほうが、情緒的に聞こえる。もちろんケースバイケース。
  • 4小節くらいの範囲を画面に収める。これは自分の頭で細かく音程を覚えられる限界、かつ画面に表示して判断できる限界が大体このくらいなので。
  • 切ることのできるブロッブス(Melodyneで示される音符)はなるべく全て切る。また、しゃくり、長音とビブラートの境目、およびレガート風に4音以上音程が離れる箇所は、音程が移動する箇所を分離しておく。これは(次に示す)修正しない箇所を絞り込む工程。
  • いったん4小節規模のブロッブス群をまとめて選んだ後、しゃくり、ビブラート、音程移動の箇所を選択解除してから、ピッチ揺れの修正をまとめて行う。歌手によって、個性が異なるので、必ず聞いて確認。
  • 長音や、歌手の得意な音域は音が大きくなりやすいのでブロッブス単位で3〜8dBまで音量を下げる。ライブではマイクとの距離を自身で調整して音量を安定させてくれる歌手もいるが、レコーディングではなかなかそうもいかない。
  • ビブラートの揺れを一つずつ切って、ビブラートの乱れを直す場合もある。
  • ビブラートのつく長音をどこまで伸ばすか、(外国語の)語末子音をどのタイミングで発するかは、録音時に決めておくこと。特に複数人数で別々に取る場合、これが揃ってないと下手くそに聞こえる上、Melodyneではこれを全く直せない、またはキレイに直せない(Melodyneに流し込む前の手順に戻るか、Melodyneで一通り修正し終えたあとにインプレイスして編集する手もあるが、必ずしもキレイにはならないので、NGていくから拾い直すなど、とんでもない作業量が発生する)。
  • 小さすぎる声はMelodyneで音程検出されないので、きちんと歌ってもらうこと。キーが低すぎて歌えない、などというメロディーにそもそもしない。何故なら、録音でなくライブでも歌う場合、緊張したらなお低い音程が出なくなるから。
  • テイクのつなぎ目はクロスフェード等できれいに整えておくこと。コンプで音量上げると、このミスも目立つようになります(基本)。