Sunoと寝不足

連日の海外ブログ記事の紹介になりますが、Production Expertに”SUNO Is Fun But Professional Musicians Shouldn’t Lose Any Sleep”と題する記事が上がっていました。
もっとも、ここでいうLose Any Sleepというのは心配で夜も眠れないって意味なので、「SUNOが秀逸な結果を生成するからといってプロが脅威に感じすぎるほどのものではない」といった記事タイトルってことになります。
記事の内容に関しては、教材の共通項同士をそれらしく結合したものに過ぎず概ね教科書通りの結果しか生成しないから音楽を生業とする人が居場所を奪われるなどということはないよと、よく見かけるAI論と大差ありません。一般にポエムと茶化されるもの…かな? うちの日記もそれこそポエムと大差ないのだけど。
もちろん活用される場はあって、気を引かない程度のBGMを流したい場面とか、著作権料を払わずに済ませたい場面とか。なので、著作権フリーのBGMや、在り来りでよい音楽を作るのを生業とする人にとっては居場所が危ういでしょうね。とはいえ彼らもそれだけを仕事としているわけではありませんし、制作能力以外で買われてるものもあるでしょうから、守備位置の一角が失われるに過ぎないでしょう、たぶん。
その辺、Sunoに限らずudioに限らず、サービス提供側はとっくにわかった上だと思いますけどもね。
あとは、何々調の曲をくれと頼まれたときに、自分で調べたり買ったりと資料収集して概念を掴んでいくよりは、指示通りSUNOに作らせてそこから学んだほうが把握しやすくはあるでしょう。
楽曲を依頼してくる側が自身のボキャブラリーでふんわりとしか指定してこず、何を求めてるのかわからず、それを探るために何度もリテイクさせられて仕事時間を削られたことがこれまで多々あったわけですが、こっそりSUNOに作らせるとラクになりますね。もっとも、だったら依頼主が直接SUNOに指示してくれたらなお早い(自身のボキャブラリーのなさを痛感してくれると輪をかけてイイですが)。よく似た偽物を作らされてそのくせ責任だけおっかぶされるくらいなら、そうして依頼主が一人で責任背負ってくれたほうが(これまでの作り手側にとって懐は寂しくなっても)精神衛生的にはよさそう。
念のため書いておきますが、ボキャブラリーがないといっても別な部分で辣腕だったりもするので、ボキャブラリーがないからダメな人と見なしてるわけではありません。得意分野って人それぞれだし。
生身の人間が心血注いで、聞き手の心を動かすような作品として作ったものと、AIが(緻密なプロンプト抜きにして)作る最大公約数的な作品(現状はそういう仮説としておく)との差分って何だろうね、と音楽を生業としている人は当面それぞれ自分なりの答えを持つ必要があるかもですね。
抽象的、概念的な答えしか出ないとは思いますが、それを踏まえないと「AIが作るものと変わらんよね」と批評されても反駁しづらい。
仮に単純に「個性」を答えとした場合、個性の実体とは何ぞや、それを実現するパラメータをどう持たせるか、どういう単位で個性を分化させるのか、それは有限なのか無限なのか、どうにも一朝一夕でAIに組み込めるものではなさそう。素人ながら。
聞き手の実体験との「呼応」を答えとした場合ならなおAIへの組み込みは困難そう。
もっとも、それは愚直に組み込もうとした場合であって、まったく別角度から「個性」なり「呼応」なりのように振る舞う手法を実装させることは可能なのかも知れませんが。
現段階ではツールとして使うのかツールに使われるのかをユーザー側が問われてる、と、結局そういう着地点でしかないのかもなと思ってます。