EQカットにまつわるエトセトラ

「カット」の功罪

最近、ミックス時のEQの設定を検索して来られる方が多いようなので、ちょっとだけ。
雑記なので、ざっくばらんに書きます。

「EQはブーストせずにカットするもの」とよく耳にします。若い頃はそうなのぉ〜?と思ったもんですが、今はほぼ同意。
先日、とある海外のミックスエンジニアの方が、

一般にローカットを何の疑いもなく全てのトラックに設定しようとするが、たとえばキックのイン/アウトおよびバウンダリーで複数トラック分レコーディングしたとき、むやみにローカットすると位相がズレて、かえって痩せた音になる。

と語っていて、たしかに無警戒はいかんと思いました。
耳で聞きながら作業するもんだから異変には気付くもんですが、片手間にやってると気付かんもんかも。

Logic : Vintage Tube EQ
Logic : Vintage Tube EQ

Loudness Warは終わったって話、この日記でも取り上げたことありますが、僕の身の回りではむしろ激化してる印象があります。
曲のリリースを個人でできるようになったお蔭で品質チェックが緩くなった影響かもしれません。
いったマキシマイズの過程で何が起きているか憶測でも持っておかないと仕事としてはキツい(たとえば思わしくないトラックがそのツールで猛烈にマキシマイズされたものをマスタリングしなきゃいけない時などは、トラックが’力技’かどうかで対応を変える必要が生じる)で、手を変え品を変えマキシマイザー的なものがポンポン現れる最近はわりと追いかけるので精一杯だったりします。

HowToはいずれ古くなる

EQのhowtoに関して、ネットでこれまでに自分が見かけた情報としては(ここまでのト書きより検索流入された方がほしい情報はこれかもしれない)、たしか飛澤さんのインタビュー記事だったと思いますが、歪んだギターは2.1kHz前後を狭いQでカットするとスッキリしてよいとか、あと出所不明の情報としてボーカルは570Hzをやはり狭いQでカットすると湿度が取り除けてよいとか。キックは200Hz辺りをやや広めのQでカットすると存在感を保ちながら重さを演出できてよいっていうのもありますね。
最近だとオケの2ミックスを作ってからEQでボーカルの帯域を削って、それから歌録りしてミックス、ってやり方が定着していそう。
削っても大差ない帯域を思いっくそ削って情報量に余裕を持たすことを第一のチェックポイントと考えていいんじゃないかなと。
色んなサウンドの特定の帯域をカットして音の変化を確認する訓練などしてみてもいいかもしれません。
それと、EQのオートメーションは煩雑にはなっちゃうので僕自身も滅多にやりませんが、効果的と思われるならもちろん吝かではない。
ただ何より、これらの手法が効果的に機能するためには無加工のもともとの音が充分な情報量を持っていることが大事だろうと思います。身も蓋もなさそうですが、最近切実に感じています。

※この日記もいつまでWebに残るかわからないので、ウザいかもしれないけど書き添えておくと、かつて載せたEQの使い方の記事なんかまさにそうで、いずれ「当時はそうだったけど今はどうかねえ」となる可能性はあります(【概訳】EQの使い方 – makou’s peephole)。