古い時代の効果音を低速再生

音効という仕事

フォーリー( Foley )とは

過去記事にも書いたし、学校の授業でも取り上げたのだけど、まだコンピューターがない時代の効果音ってフォーリーアーティストと呼ばれる人たちが演技してテープメディアに録音して、テープメディア独特の音の歪み方が記録され…とにかくアナログ環境で可能なあらゆる手段を使って音を作り出す、すこぶるクリエイティブなものだったらしい。
しかし上の記事中にも記されている通り人手不足や予算不足は今なお解消されず(プロデューサー辺りがインチキなメディアと一緒に飯を食う余裕があるなら、スタッフに予算回せばいいのにね)と。

以前TOKIOが鉄腕ダッシュの中で音効さんの仕事を紹介していたのだけれど、J事務所であることもあってYouTubeにも動画はアップされていない(J事務所でなくとも著作権侵害にあたるので、フェアユースの規定もない以上、YouTubeに無いのが本来正解なのだが)。

足音にしても、これは映画やドラマ、アニメ、ゲームのサウンド開発を行なった経験のある人なら周知の通り、革靴かスニーカーか裸足かハイヒールか、地面は砂地かアスファルトか鉄板か軋む木板かでまるっきり音が異なるわけで、Sound IdeasやHollywood Edgeなど大手の効果音ライブラリーでもCD1枚を使い切るくらいに及ぶ膨大なバリエーションになってしまう。
足音専用の音源があったりするわけだけれども。

男性が音効を担当することが多いので、男性がハイヒールを履いて女性っぽく歩いてレコーディングするなんていう、知らない人が見れば滑稽な姿もときには見せる。
つうか創造職ってのは結構そういうもので、徹底して追求するほど傍目には滑稽に見える。逆にいえば滑稽に見えれば見えるほど、その人自身は創造から程遠いとも言える。

実際に音が鳴るシーン、つまり刀で斬る音も、力強く腹部を殴る音もフォーリーで作り出せるのだが、少々手間がかかるのはいわゆる擬態語のカテゴリーで、崖から人が落ちていくとしても実際にピューンという下降音は鳴らないし、星が瞬いてもキラキラとは鳴らないし、重苦しい雰囲気だからといってドヨーンという音も鳴らない。
思い出したが、今どきパソコン操作でいちいちピーッカチカチ、キコーン!と鳴ったりもしない(だけど視聴者も必ずしもリテラシーが高いわけじゃないから演出としては自分が「どうだろう…?」と思うものでもアサインしないといけない)。
誰かがセンスを持ってそれらしく作る必要があるわけだ。

歌舞伎だとどうか、演劇だとどうかみたいな類例を知っていて脳内アーカイブが充実していれば、インスパイアされたサウンドを作ればよいだけだが、さらにもっと斬新な表現が出現した暁にはやはり何らかの擬音を新たに捻り出さねばならない。
口で表現しにくいサウンドイメージを作り手と監督者とで共有するなんてのも無理難題だから、場合によっては何十回とリテイクを重ねて監督者のイメージに近づけていくしかない。
「こいつは放っておいても意図通りの音を生み出してくれる」という信用が築かれれたならば手戻りは減るわけだけど。
仕方ないけど、こればかりは下積み的なもので相手の好みとか一般的な傾向に合う感覚を培うほかないと思う。
その意味で、色んなものに興味を持てないと創造職の入り口にすら立てないといえる。

古い日本アニメや特撮の効果音は低速再生させると面白い

通称カートゥーンと言われる海外アニメと、日本のアニメとでは、デフォルメに対する嗜好が異なり、結果サウンドの方向性も違ってくる。
ゆえにSound IdeasやHollywood Edgeの効果音素材はほぼ役に立たない。

そうすると、冒頭に書いたあらゆる手段を使って現実には存在しない音を作り出すことになる。
YouTubeでいくつかその効果音を確認でき(著作権侵害になるので転載は避けるとして)それこそサザエさんちで鳴る足音や、ドラえもんがポケットから道具を取り出すときの音なんてのは、簡単に作れそうで作れない。
1/4くらいの速度で鳴らしてみると、たぶんサザエさんちの足音はバンジョーか何かをベベベッと弾いて録音して、それを再生するときにテープの速度をグニョグニョ変えながらエコーを掛け、それを4倍速くらいで再生した音っぽいなと思った。
ドラえもんの道具の音も、コルク栓を抜いた音をオンマイクで歪みっぽく録って、それをテープを切り繋いで数倍速で鳴らした音と思われる。
他にもきっとあるのだろうけど見つからなかった。特撮ものなんかは面白いかもな。
こういうのを見ると、自分も何か斬新な音を作り出してやりたいって気にはなる。

参考までに近年のアニメ効果音もいくつかチェックしてみたら、シンセでざっと作ったんだろうなってシンプルなものもあれば、昔の別のアニメで使われていた音を再編集したんだろうなってのもあった。
レベルが落ちた印象は全くないのだけど、創造面の衝撃としてはさすがに及ばない。
余談だが僕は仕事で必要になって赤ちゃんのガラガラを買ったことがある。
事務所のあちこちを叩いたりガシャガシャ音を立てながら録音して回ったこともあるし、ボイパよろしく口で音を表現して編集でどうにかするなんてのも結構日常茶飯事。

以前、とあるアクションものの邦画を見たときに、何でもかんでも歪ませて低音を聞かせてるような雑なデザインをされているのがあって、かえって萎えてしまって途中で帰ろうと思ったことがある。
上掲のフォーリーアーティストに関する記事を読んでからだと、人や予算が足りなくて仕方なしにOK出したのかもしれないなと、少し切ない気分で納得させられた。