先日提供をさせていただいた楽曲の中で、自分でも初めて行うボーカルエディット手法を行なってわりあい上手くいったものがあったので、自身のメモがてら記しておこうと思います。
「R」を作る


日本人が苦手な巻き舌「R」の発音を、編集で少し強調しました。ここでは単語末の「R」。
7〜2.5kHzの間を図のように24dBほど弱め、同じ時間範囲の2kHzを3〜4dBほど強調しています。2つ目のスクショではさらに強く40dBほど弱めており、パックマンのように口が空いた形になっています。
結果としてはかなり「R」っぽく響いています。
※口腔の形状でRが作られるので、どの音程で歌おうが基本的にいじる周波数範囲は変わらない。ただし本来この周波数周辺の倍音はR化によって上下にシフトする(Pink Tromboneで試すとわかる)。
この手の編集には楽曲によるマスキング効果や、ある程度「R」っぽく歌おうという雰囲気があるなどの前提条件が必要そう。
だからボーカロイドに歌わせたものを「R」化させられるか、試したところ必ずしも上手くいかなかった。

これに気を良くして、単語末と次の単語頭にかかる「R」もうまく作れるのではと思ったのですが、こちらはかなり調整が難しく、そこまで「R」感を強く出せませんでした。しかしながら「L」のように発音されてしまっている子音を「R」のように濁せはしました。
イ段にする

仮歌に入れていたボカロAIがエ段で発音されてしまっていて、すっかりそれに毒されてしまった生歌の発音をイ段に変えたのが上の処理。1〜3kHzを24dBほど下げたもの。エとイ段は近似音なので、24dBの調整でも少々やり過ぎだったようです。
その他
歌唱者のクセとして、二重母音間に不要な子音が混じってしまっていたものはSpectral Repairで、語末子音や二重子音にうっすら母音が滲んでしまうのはフェードで対処しています。
所感
これら、DAW上でフィルタ等で処理できるのではと思いもしたんですが、やってみると異常に難しい。RXがそこんとこ、うまく出来てるんだろうなあと思ったり。
ARAでRXを動かせるといった話も聞くのですが、私自身LogicでのARAの動作をまったく信用してないので、試す気も起きません。
さて、これらの処置が邪道なのは百も承知なのです。
録音したものを持って帰ってきて自宅環境で鳴らしたときに、録音時にはなかった「欲」が出るとか、わりとあるのでその一環と解釈いただけると有り難い(ホントはそういうのもなくしていきたいんですけど、残念ながら自分にはそのセンスがないようで)。
それはいいとして、ニーズとしては極小中の極小だと思うのだけれど、比較的処理としては簡単らしいことがわかったので、AIでも何でもいいから、Lで発音しちゃってるものをRに直したり、その逆を行なったり、日本人にありがちな不要な捲舌発音を除去したり、飲み込みがちな語尾子音をでっち上げたり、あるいは仮歌のボカロAIの発音を生歌に転写したりするようなものがあると助かると思いました。
それがあれば、生歌に限らず、日本語にしか対応していないボーカロイドの歌を英語の発音にもっと近付けたりってことができそうなんですけどね。