Dear Reality “dearVR pro”

VR隆盛の今、Adobe MAX 2017でのSonic Scape、さらにAvid ProToolsのVRへの本格対応など音響技術への関心も急速に高まりつつあります。

個人での導入は辛いなあと思っていたタイミングで、Plugin AllianceのDear Realityから dearVR pro という、かなりお手頃価格のものがリリースされました。

VRとは関係ないんですが、現在進行形でアンビエント系というか癒し系トラックの制作依頼を別々に2件都合3曲いただいていて、せっかくだから単にステレオやMSってのでなく、HRTFを経て聞き手をどっぷり包むような音に仕上げていこうと進めていたのでした。
欲を言えばサラウンドミックスしたかったんですが、聞ける環境がまだまだ限られるので疑似という形で。

これまでも興味本位でいくつか立体音響的なギミックを試してきた中で、定位という点で、ソフト導入におけるコスパがいいと思ったのはWave ArtsのPanoramaというもの。

Wave Arts | Plugins | Panorama
Wave Arts | Plugins | Panorama

多くのものがLFOに依存するのに対し、プラグインの仕組みの中で自由に音源を移動でき、初期反射と残響も制御可能な当時先鋭的なタイプでした。
10年ほど前の製品で、現在メーカー自体ほぼ死に体な印象(比較的最近フリーでサチュレーターを出してはいる)。
Macを買い替えたりしているうちにシリアルナンバーもわからなくなって、うちではもう使ってません。

Panoramaが使えなくなって以降、Logicのチャンネルアウトプットをbinauralに設定することでハッタリかましたりしてたんですが、操作性と効果はそんなによろしくない。

まさかの高fs非対応

さて、dearVR proを喜び勇んで使い始めて一瞬で落胆。
96kHzのサンプリング周波数に対応していないようです。

操作は簡単…?

空間内での動きをマウスでコントロールするのは大変。
dearVRは、かつてのPanoramaやLogicのbinaural出力と似たような操作になっています。
良くいえばわかりやすく、悪くいえば旧態依然。

考えると音響に限らずCGの世界でも空間内での動きに対して「ならば、こういうUIだと制御しやすいのでは?」ってテストと結果のここ数年分の蓄積があるはずなんですけど、それを参照している気配があんまないですね。
たとえば、これはAmbisonic用のUIですがAudioEaseの360panってのはこういう操作になっています。

360panがプロユースのシビアなものだからUIにも工夫を凝らした、ってのも事実ではあるんでしょうが。

効果のほど

ついつい何にでも設定して全部ゴリゴリ動かしてしまいたくなるものですが、動くものと動かないものとを整理していったほうが効果として大きいもの。
dearVR自体格別によくできている印象はないんですが、使いどこを見極めて使えば充分な効果が得られると思います。
先日実際に、ダブリングでレコーディングしたボーカルの一方をdearVRで後方に配置してみたら、立体感というより臨場感が出てオケと分離ができ、すっきり聞こえるようになりました。
ロカビリーチックなショートエコーをかましてあるのでなおさら聞き取りにくかった歌詞も、お蔭でがぜん聞き取りやすくなりました。
まあダブリングのそもそもの意味から逸脱しちゃってますけど。

手頃に遊べるものとしては充分かなという気がします。