iZotope のオススメする( brilliantly mixed )5曲

「ブリリアントにミックス、マスターされた5つの曲(5 Songs That Are Brilliantly Mixed and Mastered)」という記事がiZotopeのコミュニティに上がってました。

ここでいうブリリアントとは「音のミックス具合が堂に入っている」(いわゆるモニターリファレンスにしやすい)ではなく、「よくまあこういうミックスに落とし込んだもんだ」、つまり「聡明」とか「クリエイティブ」に通ずる意味と思われます。

挙がっているのは、

  1. Snarky Puppy “Semente”
  2. Nicolas Jaar “Colomb”
  3. Derek “Chevrolet”
  4. Eero Johannes “bil_air.obj”
  5. Wekha “Dusk”

動画や音源をここに乗せると完全に記事にタダ乗りした形になっちゃうので、視聴するならiZotopeのサイトで。
ついでにいうと個々の楽曲に対するコメントの翻訳も、時間がないのでやらない。

Snarky Puppyは度々この日記でも扱ってきた大所帯バンド。
どこまで具体的にリーダーが音楽を思い描いて作り上げているのかは知らないけど、譜面的な意味での彼らの音楽は今のところ個人的にそんなに高く評価してはいない。
その代わり、どこまで遠慮せずに仕上げていくかというパフォーマンスにかける情熱、パフォーマーの力量、これにはただただ平伏させられる。
と同時に、特にYouTube公式に上がった動画がそうだが、この大所帯の音が一体どうやって整理されているのかと。

その他のアーティストの曲についても「なるほど、これは一聴の価値あり」と思わされた。
いま僕自身が音の分離を課題として取り組んでいるせいもあると思うのだけど、どの曲も音の分離のよさと帯域の広さ、あとオマケでいえば定位の思い切りの良さが耳を引く。

音の分離といっても、各パートのフレーズの関連性が断ち切られるのでなくて、フレーズ同士の意味やポジショニングが鮮明であること。
エンジニア(もしくは作曲者)自身に、音だけじゃなく音楽の内部構造を読み取る力がないとなかなかこうはいかないんじゃないか。
場合によっては楽器の構造、奏法にも口出ししているかもしれない。
信用がないとなかなか口出しを受け入れてもらえないものだが、真剣な世界であるほど肩書抜きの議論が成立し、妙な遺恨も残さないので、よけいな深読みかもしれん。

“Chevrolet”は音の立ち方も雰囲気も分離もよく、何より面白いのはこのライブ感とステレオ感。
解像度の高いステレオマイクで一発録り状態で録る手法、最近わりとよく聞く。
ミックス作業は、通常のレコーディングで楽だったところが大変に、大変だったところが楽になるんだろうな。
緊張感と一体感両方が味わえるので、聞き手にもおトクな気がする。

個人的には”Dusk”が非常に気に入った。
このバランスでミックスしようと思わないのに、すごい説得力に圧倒され、この感覚は何なのかとしばらく考えた。
こういうテイストの曲だと安全策としてはドライな方面にまとめがち。
同じように内省的な雰囲気がガバッと全体を包む、かつて僕がえらく気に入って超ヘビロテしていたThe Beauty Room(YouTube)は、当時の流行りもあってほどよく距離感の離れたドライな感じに仕上がっていたものだが、それとも全く違う。

“Dusk”に関しては、一歩踏み進めて「そこにこういう音がある」という、デザインライクな表現方法といえる。
中域寄りで湿度の高い質感の中、曲の楽器編成や構造に見合った…というかこのサウンドだからこういう構造に組み立て直されていったのかわからないけど、サウンドと構造とがしっかり噛み合った仕上がりという印象。
ちょっと禅の感覚に近いかもしれない。

気に入る音楽ジャンルじゃないかもしれないけど、興味あればぜひ。