Billie Eilish – Xanny の歪みの話

ちょっと前の記事になりますが、Production AdviceでBillie Eilishの Xanny の音量がアレ過ぎでは? いやいやいや、と記されてました。

Is Billie Eilish too loud ? (Here come the Loudness Police) - Production Advice
Is Billie Eilish too loud ? (Here come the Loudness Police) – Production Advice

海外でも「〜警察」みたいな言い方するんですねえ。

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uDiscoverMusicでも述べられた積極的なスタンスには舌を巻くばかり。

Production AdviceのIanやSonicScoopのまとめ記事ではXannyのアグレッシブなサウンドについて、マスタリングを含めたサウンドメイキングの妙と捉えているように見えます。
以前マスタリングを専門家に委ねた場合のメリットについて簡単にまとめた記事を書きました。さあ果たして専門家に委ねた場合、Xannyがこの形になったでしょうか。どうでしょうね。

自分は、そうした曲のマスタリングを頼まれた(意図的なのだと言われたら)いいよっつってそのままマスタリングするとは思いますけど、ただ、マスタリングエンジニアとして名前をクレジットするとなると、それによってエンジニアが無用な咎めを受けるようなことがあればイヤだなあって気持ちは少なからず湧きます。これがワシの仕事じゃい!と言えるほどのキャリアを積んでれば別ですけど。

Billie Eilish - Xanny
Billie Eilish – Xanny

ベースがガッと出て全体が歪むこのエグいミックス(マスタリングというよりも)は失敗じゃもちろんないでしょう。ボーカルが左右に振れている箇所が意図的に聞こえるのを踏まえるとね。
このミックス状態になってる間がXanny(意味は上のリンク先にあり)なのかもなって解釈も、

彼女はよく、自分の音楽は楽曲自らがメッセージを発信し、作品は自由に解釈されるべきだと語っている。「音楽づくりの一番楽しいところのひとつは、みんなが私の音楽を好き勝手に解釈すること。私にはそれをどうすることもできない」と彼女はネット番組“Hot Ones”のホスト、シーン・エバンスに語っていた。

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とあるように憶測の域に留めるのがよさげ。去来抄か。

そんで、この感じのエグさが僕の環境で出せるか試したら、別段難しいことはなかった。
サブベースの音作りがわかってるなら、そのまんま出していいし、もしそこでコンプなりリミッターがそれを抑制する方向に作用してしまうならコンプの前にオーバードライブなり挿してあらかじめ歪ませておけばこんな感じになります。
難しいとするなら、極端にしないと意図的だと感じ取ってもらえない面がおそらくいちばん難しい。世の中で、創作した何かを「わざとである」と伝えることほど難しいものはないですよ。発表前に意図を説明するのはある種のネタバレですし、そうなると事後に「わざとだ」と説明せざるを得ません(でも、そういう説明を読む方は稀有です)。
どの道、Billieがやったことを二番煎じしても(流行ることこそあれ)手柄にもならんので、真似るのならば実直な生き様を真似るべきなんだろうと思います。