Stereo Width と Imager

※古い記事内容は下の方に押しやりました。


モノラル音源のファイルというのは単一のファイルに1ch分のみ記録されています。

ステレオ音源のファイルというのは単一のファイルに2ch分記録されているか、または2つの(内容が同一または内容が異なる)ファイル。この場合の、内容が同一の2ch分のファイルというのは、結果的にモノラルファイルのように鳴るステレオファイルということになります。

どういう音がステレオかというと、左右にわずかでも差があるもの。この差とは音程や音量、時間差、周波数分布差、位相差などありとあらゆる可能性があります。差が大きくなるほど、ステレオ感が大きく感じられます。Stereoizer(ステレオ化エフェクト)には、それらのさまざまな手法が持ち込まれており、(1) ハース効果を用いるものや、(2) 左chに右chの、右chに左chの逆相を混ぜ込むものが多い。この(2)の場合、もとがモノラルだと左chも右chも同一の内容なので効果がない、または音量が減衰する、といった予期しない結果がもたらされます。


※ここから古い記事。

わかっている方にとっては無駄な内容となる点、ご了承いただければと。
ファイルデータサウンド(聞こえ方)と区別して書いたので、こちらもご注意いただければと。

モノラル/ステレオ

1つのチャンネルのみ持つものがモノラルで、2つのチャンネルを持ち左右別に分けて扱われるものがステレオ。
ファイルでいうと、ステレオは1つのファイルの中にインターリーヴという形式で2つのオーディオデータを持ちます。
したがって同じ音声フォーマット(サンプリング周波数、ビットデプス)で同じ再生時間のオーディオファイルは、ステレオデータだとモノラルデータの2倍のファイルサイズ(容量)になります。

イメージとして思い浮かべるなら、トランプの黒いスート26枚と赤いスート26枚を両手シャッフルでパタパタと交互に織り込んで52枚になった状態がインターリーヴのステレオファイル
一方のスート26枚だけだとモノラルファイルで、これをもう一方の26枚と対にしてステレオデータとして扱うには、DAWにワンセットだと認識してもらわないといけない。
一方の枚数だけが少ない場合は正しくないステレオデータとなります。

パン、イメージャー

LとRに完全に分かれて配置しているものをステレオというのではなく
LとRに完全に分かれて配置しているものをステレオというのではなく
LとRとの間のどこに配置しているのかが2chのデータに分けて整理されたものがステレオ
LとRとの間のどこに配置しているのかが2chのデータに分けて整理されたものがステレオ

LとRに完全に音が寄っているものがステレオなのではありません。
ある音が中央より左寄りで鳴っている場合は、ステレオデータのLチャンネルに大きめで、Rチャンネルに小さめで音量を尺度として記録されるに過ぎません。

もともとモノラルつまり1chのものを左に寄せたりステレオつまり2chのものを丸ごと左に寄せたりするぶんには、パンポットのノブをいじります。
しかしステレオの広がりを狭めたり広めたりする場合には、(スプリット形式のオーディオデータでもなければ)ステレオウィズス(Stereo Width)をいじります。多くの「イメージャー」がそれを可能にします。

ステレオウィズス(Stereo Width)を狭めるというのはこういうこと
ステレオウィズス(Stereo Width)を狭めるというのはこういうこと
ステレオウィズス(Stereo Width)を広げすぎるとRのチャンネルに記録できる範囲を超えてしまう
ステレオウィズス(Stereo Width)を広げすぎるとRのチャンネルに記録できる範囲を超えてしまう
ステレオウィズス(Stereo Width)調整の計算式通りに行うとRの範囲を超えてしまった音と逆人格のものがLチャンネルに出現することがある
ステレオウィズス(Stereo Width)調整の計算式通りに行うとRの範囲を超えてしまった音と逆人格のものがLチャンネルに出現することがある

広がりを0にしたとき、中央から音が聞こえるためサウンドとしてはモノラルですが、実体はステレオデータです。ステレオデータのモノラルサウンド

イメージャーで音を広げると、LRで記録できる範囲を超えてしまって、逆相の音が逆チャンネルに出現することがあります。色んなケースがあるので一概に言えませんが、だいたいの場合これはダメ。
ただ、近年のミックスは逆相が多少出るくらいイメージャーで広げるのが一般的になってきています。
問題はわかってて逆相を作ってるかどうか。

それと…モジュレーション系のステレオエフェクトを掛ける際にそのLFOが左右で逆相であることと、音源自体が左右逆相なのとは別。これはこれで少考えるべき点もあるので、機会あれば記事にまとめたいとこです。

モノラル再生されること

あるテストデータをLogicに打ち込んでみました。

パンやイメージャーを調整したもの
パンやイメージャーを調整したもの

ドラムは中央定位でやや左右に広がりがあり、エレピは完全右寄せ、ピアノは完全左寄せ、ベースは倍音の限りなく少ない低音で完全中央(モノラル)にしてあります。
2小節ごとにこのようにパラメーターを変更しました。

  1. 無加工のステレオデータ
  2. 左chのみに寄せた
  3. 右chのみに寄せた
  4. ステレオ音声の広がりを0%にしてモノラル音声にした
  5. ステレオ音声の広がりを200%にした
  6. モノラルにして右chを逆相にした

これを手持ちのiPhoneで聞くと、

  • 2ではドラムが小さくなってエレピが消え
  • 3ではドラムが小さくなってピアノが消え
  • 4は1と同じ聞こえ方
  • 5は音量が小さめ(スマホじゃなくてもそうだが)
  • 6では完全に音が消える

いわゆるふつうのモノラル化の処理が行われていることになります(追記:ステレオ再生されるスマホでは結果が異なります)。
最近は、スマホのスピーカーで聞いたり、モノラル環境で音楽が再生されることを想定したミックスが一般的で、ミックスバランスが崩れるのを避けるには完全にLRに振ったり逆相混じりの処理を行わないのが賢明ということになります。

ステレオ化処理後のモノラル再生

ついでなので、先ほどのドラムのトラックに、手元にある幾つかのステレオ化”的”処理を加えたものも載せておきます。

  1. ノーマル
  2. 左右逆相
  3. LogicのStereo Spread
  4. NoiseMakerのBinauralizerで後ろに定位したもの
  5. Xfer RecordsのDimension Expander

  • 2の左右逆相は先ほどのと違ってモノラル化せずに処理してるのでリバーブやアンビエンスなど広がりのある要素だけ音が残っている状態
  • 3はほぼ1と変わらず(モノラル化したものと、モノラル化した上で3の処置を施したものだと基本的に同じになる)
  • 4はだいぶ奥に引っ込み(これもスマホじゃなくても似たような具合)
  • 5はディレイベースなのでフランジングがかかった状態になる

ぞんがい、2の左右逆相よりも3のStereo Spreadのほうが左右逆相っぽく聞こえてしまうのが厄介ですが、モノラル化しても基本的にサウンドに変化がないのは3のほう。
サウンド的にはこの世のものならぬ気持ち悪さがあるので、さじ加減に気をつけたほうがよいと思います。