Audiomodern “Soundbox”

Audiomodernから、Output “Arcade”やExcite Audioの近作を少し連想させるサンプラーエンジン、Soundboxと、その音色ライブラリにあたるVoxmotive, Kromium, Cosmoの3作がまとめてリリースされています。
SONICWIREで取り扱われる可能性あり。日本語マニュアルやサポートを要する方は、SONICWIRE経由での導入を推奨。

あれ、この人はBaby Audioの人じゃなかったかな…と思ったら、Alexander Ewaldというベルリン在住のデモンストレーターみたいな立場の人なんですね。日本でいう氏家さんみたいな立場の方でしょうか。
インストール
SoundboxはWebからそのままダウンロード。
各ライブラリ(パック)は購入するとダウンロード可能になります。そこそこサイズがでかいです。
ダウンロード後、Soundboxを起動して、所有するライブラリのいずれかのライセンスを入力。
各ライブラリはImport Packすると、データの変換が行われます。これもそこそこ時間がかかります。おそらくシステムのドライブかライブラリフォルダに展開されると思われるので、空き容量に注意しときましょう。
左下のUSER SOUNDSってとこをクリックすると、プリセットブラウザが開き、プリセットの設定に応じて各レイヤーにサンプルが読み込まれます。この読み込みも若干かかりますが、プレビューボタンがあるので、読み込む前にプレビューすることで時間を節約しましょう。Output “Arcade”のようにプレビュー再生ごときで待たされることはありません(どうしてもあれが許せなくてサブスク解除した)。
機能、操作性
せっかくNFRをいただいたので、機能や操作性などチェックしていきます。
WAProductionのソフト同様、全体的にデザインが暗めですが、色味がクッキリしておりウィンドウのリサイズもあっさりできるので、ぱっと見の印象だけでも大違い。
ただ、ハッキリとしたノブやスライダーのサムが表示されているわけではないので、僕のようにキリのいい値に設定したい人にはイラつく場面がありそうですね。今に始まったことじゃないのですが。
基本、4音色(それぞれにおいてマルチサンプル;これ自体を「レイヤー」と呼んでる)を読み込んで、いわゆるレイヤリングまたはキーゾーン(キースプリット、ベロシティスプリット対応)に振り分け、もろもろ好きに編集して鳴らせます。
Controls, Effects, Modulation, Arpeggio, Vector, Masterといったタブで出力サウンドのデザインを行っていきます。
要は、ハードウェアのPCMシンセに比較的似た作りになっていると言えますね。個人的には、PC内で動くソフトだからこそ可能な機能(たとえばアルペジオのMIDIドラッグ出力とか、グラニュラー処理とか、ソフトウェア内でのサイドチェーンとか)があってもいい気がしますけどね。
なお、マルチ出力モードで起動できますが、出力先の指定が見当たりません。MIDIの出力先は選べます。マニュアル内を”output”で検索しようとしても見つからず、もしかしたらおいおい搭載される機能なのかもしれません。「検索」で思い出したけど、MacでのPDF内の日本語の文字検索、そろそろ何とかしてくれ。
音色ライブラリについてがポイントになってくると思いますが、パッドやプラック音色以外、サウンドデザイン寄りの抽象的なものが多く、必ずしも鍵盤に合った音程で鳴るわけではないので、既に作った曲にアドオンする形での用途よりも、これから何か作ろうってときの着想を得る用途としてのほうが向きそう(むろん絶対ではない)。
今のところ、アンビエントなシンセ系、少し民族がかったプラックシンセ、ボイス(ボーカルフレーズおよびFX含む)といった、Audiomodernの好みが如実に現れたラインナップとなっており、Soundboxもしくはこれらライブラリの評判が良ければ徐々にジャンルが広がっていくと思います。
といったところからの感想として、Soundboxはまだ機能に物足りなさを感じる部分もあるけれど、Audiomodern初の統合的サンプラーエンジンにしてはUI内に機能が行儀よくまとまっています。蓋を開けるとラベルと宣言名に不整合が目立つなどということも過去にありましたが、この方向性のソフトだとオートメーションに依存する場面も少ないでしょうし、不整合が仮にあちこちにあったところでそこまで困ることもなさそう。
ロードには多少時間がかかりますが、再生時には変にどこかに負荷がかかり過ぎることもなく、スムーズに使えそうです。充実したサンプルパックの内容を、飽きるまでいじり倒せるんじゃないですかね。