AIR Music “Vacuum Pro”

AIR Music Technologyの Vacuum Pro がPlugin Boutiqueで日本円にして¥113の叩き売り状態(本来¥15,000弱)だったので、別段欲しかったわけではなかったけどDemo動画など確認した上で購入しました。
この叩き売りは48時間限りとのことなので、この記事が公開される頃には残り数時間のセールかと思われます。

あ、前にも書きましたがAIR Music Technologyはドイツのメーカーで旧Wizoo社ですね。

Vacuum Pro 、ひとことで言えば古色蒼然

ひどく古びたさま。いかにも古めかしいさま。また、古めかしく趣のあるさま。▽「古色」は年を経た物の古びた色合い。古風な趣。「蒼然」は古びた色のさま。

古色蒼然の意味 – 四字熟語一覧 – goo辞書
Vacuum Pro | AIR | Virtual Polyphonic Analog Tube Synthesizer
Vacuum Pro | AIR | Virtual Polyphonic Analog Tube Synthesizer

見るからにレトロを意識しておる様子。
インジケーター部に見えるテクノ系フォントがいかにも。レタリングが流行ってたころ、うちにもこのフォントのレタリングシートありましたわ。

SynthEdit隆盛期にこういうレトロコンセプトのフリーのVSTiプラグインはかなりたくさん出回ってましたね。
概して、いや、今にして思えばですが、それらは歪み方がなにかデジタル臭かった。
キリキリいう帯域が持ち上がり、その帯域を抑えると存在感がなくなり、かといっていま以上にそこを持ち上げると耳障りっていう厄介な歪み方(今こういうときはQを超狭くして削るか、2ms前後のスーパーショートディレイをかなり濃いめにかけ、コムフィルタ状にして帯域を削ってます)。
それらと比べるのもアレだけど、Vacuum Proは独特ないい歪みじゃないですかね。
バリバリとした野蛮な歪みでもキリキリいう歪みでもなく、「あれ?歪んでるの、これ?」と思わないこともないのですが、おそらくそれこそがVacuum Proのウリと思われる芯のある歪み方って印象です。

“歪み”といえば、ここ数日Thornのレビュー記事のアクセスが増えてるのですが、Thornも少し扱いにくい歪み方です。
パラメーターを調整しつつ使ってみた結果、自分のミックスの腕の悪さを差し引いても、どうも一工夫ないし二工夫以上してあげないとベチャッと背面に張り付いてしまい前面に出てこない感じ。

DSAudioSoftware “Thorn”

故意の不安定さ(動作が、ではなく)

上段少し右にあるAgeとDustというパラメーターは、ピッチを揺らすなど発音の安定性をわざわざ妨げるためのもの。
音質には影響が出ないので、かえって取ってつけた感があります。
これを完全にOFFった状態、要するに購入後すぐに音を出してみたときには、それでもなにかピッチが不安定な印象を受けました。きわめてわずかにピッチをズラしてるのかもしれません(3,4セントくらい? 気のせいかもしれない)。

クラブでさんざん音楽を聞いたあと自宅にかえって仕事の続きをしようとしたらなんかピッチがおかしく聞こえて仕事にならなかった、あの感覚がよみがえります。
最近のクラブではほとんどないんですけど、BPMを合わせるためにレコードの回転数を調整すると微妙なピッチになるじゃないですか。DJ MixのアルバムとかMixcloudもそうか。そういうのをさんざん聞いたあとだと、僕、正しいピッチがわかんなくなるんですよ。聞かなきゃいけないから聞くけど、聞いたあと仕事にならないというのにしばらく悩まされました。

純正調聞いたあとの平均律もこんな感覚だったかもなあ。

控えめポリ数

ポリ数は右上のとこで指定でき、これがMonoから6ポリまで。少々控えめです。
控えめですが、いわゆるUnison機能によってそこそこ重厚なSuperSawっぽい音まで出るので、そんなに困らないかもしれません。
ただ、多重和音好きの僕としては若干もどかしいです。

dB/Octをぬるぬる変えられる

RolandCloud "Jupiter-8"
RolandCloud “Jupiter-8”
Vacuum ProのdB/Oct値
Vacuum ProのdB/Oct値

このパターンは初めてかも。
Jupiter-8のようにHPF(またはBPF)とLPFとの2つのフィルターを通せるのですが、このCutoffのdB/Octを0〜24まで自由に変えられます。
レゾナンスの利きはちょっと独特…かなあ。うまい言い方が見つからない。とりあえず、ちょっと違和感。

質感とプリセット音色

率直に言って、アナログシンセとして見るに格別よいとは言えないと思います
だけど、矛盾した感想になっちゃいますが、サウンドの再生技術からいえば、この手のレトロコンセプトのものにしては非常に珍しく1音1音くっきり聞こえるので、ソフトシンセのサウンドとしてはすこぶるイイと思います。
オーバーサンプリング要らずで粒度の高いサウンドを聞かせられる一級クオリティでしょうね(内部的にオーバーサンプリングしてるのかもしれない)。

なので捉え方としては、”レトロチックな加工部品を持った高品質なソフトシンセ”。
少なくともThornやLinPlug Spectralよりも質感は圧倒的にいい。
言っちゃえば好みの問題かなという気もします。

もとから用意されているプリセット音色は非常によくできていて、お蔭で自分で音色を作ろうって気にまったくなりません。
YouTubeにアップされたPresets Show Caseの動画のせいかと思いますが、最新のEDMでの導入よりも、オーソドックスなジャーマンまたはロシアン・ハード・テクノ方面の方が導入するほうが能力を抜群に発揮できると思います。ただしかつてのジャーマン・ハード・ミニマルみたいなモーレツFMサウンドまではいかず、あれよりはストイック。

セール価格が¥113なので、さすがに値段の価値はあると言わざるを得ません(ポイントのせいもあって自分は無料でゲットしました;ポイント使うまでもないのだけど)。