DCオフセットの話

何度か記してきたDCオフセット。

DCオフセットとは

DC offset
DC offset

オーディオの波形データは、0の横軸の上半分と下半分とが等量じゃないとよくない。
だけど録音環境、電気的な影響、特定の奏法や編集結果(サイン波のちょうど半周期を意図的に切り出した場合など)によっては上下が等量でなくなる場合があります。

単純に何らかのバイアスがかかってしまった場合
単純に何らかのバイアスがかかってしまった場合
超低い周波数の何かが混ざり込んだ場合
超低い周波数の何かが混ざり込んだ場合
出だしに変なのがいる場合
出だしに変なのがいる場合
DCオフセット除去せずにリバーブをかけたものにオフセット除去を施すとこうなる。
DCオフセット除去せずにリバーブをかけたものにオフセット除去を施すとこうなる。

素材面で怪しいのは、

  • マイク
  • 打ち込みドラム(マイナーな製品は特に注意)
  • サンプルパックの素材

またエフェクトではこの辺りが怪しい。

  • リバーブ
  • アンプシミュ
  • ビットクラッシャー

素材のたかが一つにDCオフセットずれが起きているとき、ミックス後に直すことはできません。
したがって作り手が気をつけないといけないし、元を辿れば素材やエフェクターを作った主までもがきちんと処理しないといけない

ちなみに「上のスクショで出だしに変なのがいる場合」はギターのエフェクトチェーン内のノイズゲートにより発生することが稀にあります。

なぜ良くないか

DCオフセットがズレている場合の問題
DCオフセットがズレている場合の問題

スピーカーに悪影響を与えるほか、ズレたままでは音量のポテンシャルを活かせません。
ピークインジケーターと聴感に差が生じる、イリーガルなデータとも言えます。

原則として、曲で使うすべてのオーディオ素材にあらかじめDCオフセット除去を行うべきなのですが、DCオフセット除去すると全体がずるっと上下に移動することでデータの頭やお尻がゼロクロスでなくなり、プツッという音が鳴ってしまいます。
それを無くすためにフェードをかけるのが常套手段なのですが、すると新たにDCオフセットのずれが検出されて堂々巡りになってしまうことがあります。
レコーディング時や素材使用を決めた時点で予防できるなら予防してしまうのが最も堅実。

除去/ブロック処理は各ソフトで同じか

Logic Pro XのDCオフセット除去機能の場所
Logic Pro XのDCオフセット除去機能の場所
AcousticaのDCオフセット除去機能の場所
AcousticaのDCオフセット除去機能の場所
StudioOneのMixtoolのDCオフセットブロック機能の場所
StudioOneのMixtoolのDCオフセットブロック機能の場所
Ozone 7のDCオフセットブロック機能の場所
Ozone 7のDCオフセットブロック機能の場所

DCオフセットの処理は、少なくともWindowsのSound Forgeと、MacのLogic Pro Xでは結果が異なりました。
自分の環境でDCオフセットを測定してズレが検出されたからといって、相手が除去処理を怠ったとも言い切れない点にも注意しておきましょう。

代わりの処理

簡単に防ぐにはローカットが有効です。
DCオフセットのズレは、限りなく0Hzに近いスーパー低い音が混ざりこんでると考えることもできるので、ローカット(手持ちのEQでいちばん低い周波数のとこにローカット入れればまあ充分)すればズレは大概なくなります。
ただし新たにクリップが発生することもあるので要チェック(今のDAWなら天然でオーバーサンプル(ここでは、ピークを超えた部分をカットせずに保持する手法)を備えてるのでさほど気にする必要はありませんが、ステムで書き出す必要のある曲であればステムに十中八九クリップが発生するのでゲインを下げるなり何らかの対策が必要です;非常に大掛かりな対策が必要なこともあるので、ゲインステージングはしっかりしておくべき)。
またEQによって位相が変わり、処理したトラックとその他のトラックとで打ち消し合う現象が起こることもあるので、ローカットを万能と考えないほうがいいです(ここでは位相問題の対処法は割愛)。