「ミックスとマスタリングのベーシックガイド」(概訳)

なんとなく訳してみる。そのまま訳すとわかりづらい部分は随所意訳で。
どうも単語の使い方が一貫していないように見受けられたので補正。

A Basic Guide to Mixing and Mastering
A Basic Guide to Mixing and Mastering

念のため、誤訳の可能性は頭の片隅に。

A Basic Guide to Mixing and Mastering

ミキシングとマスタリングは専門分野とでも言うべき2つの必須要素だ。読者の方々はホームスタジオをお持ちだったり、完成度の高いトラックを作るためにギターやピアノ、ドラムなど自分の楽器を録音したいとお思いだろうか。本記事では、自分のトラックを作る際に必要となるミキシングやマスタリングを考慮した、あらゆるノウハウを提供したい。

よいミキシングやマスタリングがなぜ必須なのか

はじめに、ミキシングとマスタリングをきちんと説明するところから始めたい。ミキシングとは、オーディオの個々の階層を一つのトラックに、あるいは既存のトラックに音響面で調整を加えつつまとめていくプロセスを言う。マスタリングとは、コンプレッションやイコライゼーション、ステレオエンハンスメントその他の様々なマスタリング技法を使って、まとめ上げたトラックを最適化していくプロセスを言う。

本記事では、コンプレッションとEQの類いのマスタリングプロセスを検証しつつ、マスタリングに対して少し余計にスペースを割いて綴っていきたい。
さて、筆者のホームスタジオでトラックを録音するとして話を進めていこう。自前のデジタルコンデンサーUSBマイクを使って、筆者のDAWであるCubaseにギターとピアノ、ドラムをそれぞれ録音していく。

トラックが単に並べられ曲が再生されるわけだが、出音はきわめて抑揚に乏しくフラットだ。ここで何をするかというと、ミキシング。必要な箇所…たとえばギターはこの部分ではもっとクッキリ聞こえてほしいなんていう箇所でオーディオトラックの音量をいじる。これがトラックのミキシングであり、出音を階層化することであり、音量を定めることである。不要なノイズやクリックも、ミキシングの段階で除去する。

これでトラックの聞こえ方はだいぶ改善するのだけれども、まだまだやらなきゃいけないことがある。マスタリングだ。マスタリングすることで、トラックに生命を宿らせ、サウンドを息づかせることができる。ドラムを一層ダイナミックに、ギターをもっとシャープな音に(あるいはその逆も)、ピアノをもっとソフトに、それから…ベースがいない場合にピアノの低音をブーストしたいなんてことも思うかもしれない。

これは、トラックを息づかせ、サウンドを一層ダイナミックにするためにやることの例。以下(元記事参照)、読者の方々には筆者が録音したトラックを例として確かめてもらいたい。1つ目のオーディオファイルは生録そのまま。やったことというと、楽器ごとに並べただけ。2つ目のオーディオファイルは同じ楽曲にマスタリングを施したものだ。コンプレッション、イコライゼーション、ステレオエンハンスメント、リバーブを施してある。2つ目のオーディオファイルで差は歴然。

コンプレッションとコンプレッション技術

ほとんどの読者はコンプレッションが何であるか既にご存知だろう。だけれども、ほとんどの読者はおそらく正しく使えていない。オーディオのダイナミックレンジを抑えるというのは一般的なことであり、今時のほぼ全てのオーディオトラックにおいて行なわれている。コンプレッションとは、オーディオがクリップしないようにすること。オーディオがデシベルリミットを越えないようになるので、音もやかまし過ぎなくなる。

どのように機能するかというと…。録音されたオーディオが大き過ぎて、デシベルリミットを越えてしまうとき、コンプレッサーはそのオーディオのピークを見つけ次第抑え込む。こうしてリミット内に留められ、音がやかましくもならなくなる。けれども…ソフトな部分に対しても反応して帯域を持ち上げてしまう。最終的に、平均的な波形を得られるのだけれども、帯域の面でソフトな部分は持ち上がり、音の大きな部分は抑制され、音量の閾内に収められる。

コンプレッションの問題は、近年多くの人々がコンプレッションとの付き合い方をわかっていないこと。コンプレッサーを一つのトラックに一つ設置することで全てが音量のデシベルリミットに抑えられてしまうのだけれども、それによりオーディオは平らかになり、おかげで音楽のソウルな部分やダイナミクスもないがしろにしてしまう。

誰かが実に繊細なギターチューンを奏でいて、たとえば最後のほうに音の大きな部分があっても、全体を平均化させるために最初の部分の音量を大きくしてしまう。これではサウンドの情感を失わせてしまうので、コンプレッションの度合いを軽減させるべきだろう。最近の音楽では、多くのアルバムがやかましく、ダイナミクスに欠く(Loudness Warというやつだ)。近年はほとんどの人ができうる限りの音量を出そうとしている。結果、情感を失い、ダイナミクスを欠いたトラックとなっている。

実は物理的なコンプレッサーと架空のコンプレッサーという別々のコンプレッサーがある。後者は近年どんどん認知を上げつつある。自在さがあって、スタジオに物理的なスペースも必要としないのだ。レスポンスも早いのでダイナミクスの面で扱いやすい。異なったコンプレッサーは異なった音質と特徴的な音色を備えている。有名なコンプレッサーの例としてはパンチの利いたサウンドを生むVC 76 FET、滑らかで暖かいサウンドを生むVC 2A Electro-Opticalコンプ(訳者注:NIのサイト見たほうが早いですね)。

コンプレッションについてはもう多少おわかりだろうから、今度はコンプレッション技術について見てみよう。といっても、Audiotuts+のここでセッションしたのがすぐ読めるのだけれども。これはビックリするくらい役立つセッションで、トラックに有効にコンプレッションを利かすための多種多様な技術を提供している。またコンプレッションのことを考慮に入れながら、書物(電子書籍も)や他のWebサイトなど有用なリソースを見つけることに勢力を注ぐこともしてもらいたい。

イコライジング

イコライゼーションは特定の周波数帯域を持ち上げるもので、Cubaseの2種類のEQインターフェイスはこのようなものだ(元記事参照)。
1つ目のはスライダーを使って特定の周波数帯域を持ち上げられる。2つ目は全ての帯域を視覚的に表示している。EQは実にわかりやすい。たとえばバスドラを録音したら、その音を薄っぺらに聞こえさせたくないので、そこで比較的低い帯域を聞こえさせたいと思うだろう。バスドラだと100〜300Hzあたりの低域をEQで持ち上げる。こうやって自分が求めていた音を得ていくわけだ。EQを使って、その楽器に求める完璧な音色に仕立ててゆく。たいていのレコーディングにおいて、全ての楽器がイコライジングされているのだ。

以下、2つのオーディオファイルを乗せておく。1つ目のはEQを施していないギターとドラム。2つ目のオーディオファイルは内容が一緒だけれどもEQが施されている。違いに気付いてほしい。2つ目のトラックはよりビビッドで暖かい

さっきEQは理解しやすいと欠いたけれども、扱いは難しいのだ。ほとんどの楽器において、EQを使って作り出すことのできる音には限りがない。2点だけ考えておくべきは、自分の音が楽器としての音質、音色の特徴に適っているかということと、曲にマッチしているかということ。適切なイコライゼーションにどんな規則もないわけで、自分の耳で音を判断しなくてはならない。

下の3つは同じオーディオファイルだけれども、別々のEQをしてみている。

Resources: http://www.soundonsound.com/sos/aug01/articles/usingeq.asp(アーカイブ)

その他のエフェクト

コンプレッションとイコライゼーションという2つの重要な点に加えて、トラックに活気を与えより魅力を引き出すエレクトが他にもある。下記のものは基本的なお役立ちアイテムとなるだろう。

Stereo Enhancement (ステレオ・エンハンスメント)
ステレオ・エンハンスメントは極めてシンプル。通常、音楽や音は2つまたはそれ以上のスピーカーで鳴らされる。ほとんどのコンピュータースピーカーと全てのヘッドフォンは2つのスピーカーつまりステレオスピーカーを持っている。ステレオエンハンサーは単に2つのスピーカーから音を出すものなので、一方向からしか聞こえない音以上の効果をもたらす。これにより二つの耳で聞く自然な音になる。

5.1ch サラウンド向けに強調させるステレオエンハンサーもある。Width, Delay, Colorなど異なった設定にして再生することが可能。

Reverb (リバーブ)
リバーブは基本的にエコーである。オーディオトラックにリバーブをかけるとエコーが生成される。この結果、いっそう生々しいサウンドになる。特にバーチャルインストゥルメントで構築されたモックアップは往々にしてリバーブ頼りである。バーチャルインストゥルメントの音がたいがいドライ過ぎるので。

とはいってもライブレコーディングにおいてもリバーブは有用で、それをすることでトラックにより暖かみや自然な雰囲気を与えるのだ。しかしここまでの他の項目で指摘してきたように、リバーブとの向き合い方を知り、かけ過ぎがいけないことも肝に銘じておく必要がある。また、異なる楽器には異なるリバーブタイムの設定が必要だ。

Additional Additional Effects (その他のさらにその他のエフェクト)
キリがないので、今直ちになんでもかんでも示そうとは思わない。基本的なものには、denoiser (ノイズ軽減), amplifier (アンプシミュ;大抵はギター向け), tunerなど。ひたすら自分のDAWに備わったエフェクトのリストを眺め回して、自分の曲を息づかせるたくさんのエフェクトがあることを知っておこう。

結論:Mixをマスタリングすること

最後に、ミキシングとマスタリングの肝についてお話ししたい。それは音楽を生み出すことにおいて作曲/編曲/記譜するのと同等に特別な事柄なのだ。作曲や記譜するのと全く同じでミキシングもマスタリングも徹底した知識と経験を必要とするのだ。

曲の要素を重ねたあと楽曲は終始素晴らしい音を奏でているかもしれないけれど、多くの人はそこからさらなる改善を試みないというミスをおかすのだ。実際コンプレッション、EQ、リバーブやその他のエフェクトを活用することでもっともっとよくできるのだ。これ以上その楽曲に何も求めるものがくなるまで楽曲を世に出さない、とまで考えるべし。

記事を最後まで読んでくれてありがとう。ミキシングとマスタリングにおいて読者の方々にクリエイティビティを捧げることができたらとても嬉しい。

といった内容で、いたって初心者向け。そうでした、psdtuts+をはじめtuts+ネットワークの記事はたしかに初心者向けの記事に特化しているんでした(tutsはtutorialsのこと)。誤植も多かったな…。
記事中のResourcesにあるSound On Soundっていうのは作り手向けの海外の音楽情報サイトで、ちょっと前まではサンプリングCDの評価の目安みたいな位置付けでもありました。そっちの記事を訳したほうが有用だったかもなあ…。そういえば、リットーさんからこんな本も出ましたね(アフィではないのでクリックはご自由に)。

余談ながら、いつからかLogicのEQってアナライザーが搭載されるようになって重宝してます。FabfilterのPro-Qだったかもアナライザーついてて便利で、こちらはさらにM-Sで別のEQをかけられます。使い分けするように気をつけてますが、Fabfilterのほうは今ひとつまだ感覚に馴染んできてません。

リバーブは、ずっと前にサンレコの連載記事で赤川さんが1曲につき使うリバーブは1個だけみたいなこと仰ってましたね。それ読んで以降僕もずっと気をつけてるわけですが、一番困るのはバーチャルインストゥルメントの音源がもともとリバーブかかってる場合ですよね…。