HMT (ハーモードチューニング)

ハーモードチューニング(HMT)に関する日本語での解説記事をあまり見かけないので、ガイド程度に手短に紹介しておく。

コンセプト

「調律」と書くと誤解がありそうなので、tuningは「調整」と訳すことにする。

This is a microtonal tuning system used in certain Audio Unit software instruments, that can make them sound harmonically richer by fine tuning thirds, fifths, and sevenths to specific intervals in cents.

訳:幾つかのAudio Unitsのソフトウェア音源の持つマイクロトーナル(微分音)なチューニングシステムで、3度や5度、7度の音程の周波数比率を調整することにより和音を美しく響かせることができる。

What is “Hermode Tuning – inSync”?

“Pure tuning for that extra punch”: Cubase 7 will be featured with Hermode Tuning, available since Dec 5. 2012.
(CUBASE 7 – THE PRODUCER’S CHOICE)

  • Hermode Tuning – tunes electronic instruments dynamically in real time.
    訳:リアルタイムで電子楽器のチューニングをダイナミックに調整する
  • Hermode Tuning – takes away the tuning errors of traditional equal temperament, tuning fifth and thirds to a high degree of purity. The result is powerful bass and brilliant treble.
    訳:平均律によるチューニングの問題を解決し、5度や3度を高い度合いで響くように調整する
  • Hermode Tuning – is compatible with equal temperament.
    訳:純正律と互換性がある

HMT | Hermode Tuning | Program Controlled Tuning

HMTの本家サイトで紹介されている動画がこの上なくわかりやすいので、一度ご覧いただくのがよさげ。

  • Pure tuning = Just Intonation(JI):純正律
  • temperament:音律(Wikipedia英語版
  • purity:濁りやうねりがなく、よく響くこと

実際の音

平均律で鳴らしたもの、純正律で鳴らしたもの、HMTをオンにして鳴らしたものを挙げておく(うねりが聞き取りやすいようにあえて歪ませた)。
フレーズはCメジャーの和音、Fメジャーの和音、Gメジャーの和音、最後にBメジャーの和音。

平均律で聞こえるうねりは、Cの純正律のとき無くなり(Bメジャーは濁る)、HMTオンのとき全ての和音でうねりが消えている(Cubaseでは!)。
早い話が、平均律にせよ純正律にせよ中全音律(meantone)その他多くのチューニングにせよ、音程の周波数は通常一定なのだけど、HMTは瞬時に音程の周波数を変更して、このうねりを発生しにくくする仕組みとなっている。

声やフレットのない言わばプリミティブな楽器がピッチコントロール自在なのと比べると、ピアノなど構造化された楽器であるほどピッチコントロール困難。
Fluid Piano(YouTube)やMicrotonal Fix-Fretted Guitar(YouTube)なんてのもあるけど即座に適切にピッチを変更するのはかなり困難なわけで、便利な機能といえる。

なお、ピッチを変えて固定しておくならDAWでその楽曲のチューニング設定を決めておくか、外部のMIDI音源等を用いるのであればシステムエクスクルーシブで送っておけばよい。
とはいえ、ソフトウェア音源にせよ外部MIDI音源にせよ全てがHMTに対応しているわけではないので、出番は選ばざるを得ない。

Cubaseでの設定

ちなみに、いつもここに挙げる音源はLogicでバウンスしたものなのだけど、どうもLogicのHMTがうまく機能しない(うちだけ?)のでCubaseからバウンスさせてもらった。
設定方法は下のスクショの通り。

マニュアルの書き方が紛らわしいのだけど、「MIDI Modifiers」でなく「MIDI モディファイアー」でHMTのオン/オフを決めるということ。機能が微妙に異なる部品がほぼ同名、ってのはアカンやろ。
HMTは別として、純正律、キルンベルガー(Wikipedia)、ヴェルクマイスター(Wikipedia)、そのほか古楽”系”や民族的なさまざまな音律を適用するにはMIDI Modifiersのほうを使う。

ちょっと面倒なのはこのHMTを機能させるための和音専用のトラック、つまりレファレンス用のトラックを準備してあげる必要があるということ。

Logicでの設定

上に書いたが、うちの環境ではHMTが利いたり利かなかったりする。
サイクル(ループ)再生の二巡目で利き始めるようで、それでもなおBメジャーではうねりが消えるのに(上と同じ例を使った)ほかのCメジャー、Fメジャー、Gメジャーはうねりが消えない。
CubaseとLogicでなぜ結果が異なるのかわからない。

英語版のマニュアルの該当項目を転載しておく。

  • Hermode Tuning: Type pop-up menu: Allows you to set different Hermode Tuning modes.
    • Classic (3/5-all): This mode provides a broad and regular tuning of pure 5ths and 3rds. In cases of conflict, the degree of purity is temporarily reduced. This mode can be used for all types of music. The value of the Depth parameter indicates the degree of the 5th and 3rd purity. A setting of 100% determines maximum purity. A 10% value is the lowest purity setting. Offsets the tuning to an equal tempered scale.
    • Pop/Jazz (3/5/7-all): 5ths, 3rds, and 7ths are changed in this mode. It’s great for Pop and Jazz styles, especially when using sustained chords. It’s less suitable for polyphonic music, as the detuning of the natural 7th is significant. This mode should always be used with a Depth of 90% or 100%, as other values will render the natural 7th acoustically ineffective.
    • Baroque (3/5-adaptive): This mode tunes pure 5ths and 3rds (with changing characteristics). In tonal music, with a clear harmonic center, the middle chords are tuned very purely, whereas more distant chords are tuned with less purity. If the harmonic center becomes unclear, all chords are tuned with equal purity. As with the other mode parameters, a Depth value of 100% determines the highest purity, and a value of 10%, the lowest purity.
  • Hermode Tuning: Depth slider: Allows you to set degrees of effect between 0% and 100%.

日本語のマニュアルではこのように訳されている。

  • 「Hermode Tuning(HMT)」の「タイプ」ポップアップメニュー:さまざまな Hermode Tuning モードを 設定できます。
    • クラシック(3、5度-すべて):5度と3度を、広い範囲で純正に保とうとするモードです。干渉がある場合 は、純正律の精度が一時的に下がります。このモードは、あらゆる種類の音楽で利用できます。「深度」 パラメータの値は、5度と 3度の純正の度合いを示します。100%に設定すると、最大限の純正度が得られます。 10%にすると、純正度が最も低くなります。0%にすると、チューニングが平均律になります。
    • ポップス/ジャズ(3、5、7 度 – すべて):このモードでは、5度、3度、それに 7度が調整されます。ポップスやジャズなどに適していて、特に和音の響きを持続させる曲では有効です。しかし、7度のずれが大きい ので、多声音楽には比較的向いていません。このモードを使う際は、「深度」を90%か100%にしてくださ い。その他の値では、7度の音が音響的に効果のないものになります。
    • バロック(3、5 度 – 適応):このモードでは、純正5度と3度を(特性を変えながら)調整します。調性の ある音楽では、主和音は純正に響きますが、そこから離れた和音では純正度が低くなります。和声の中心が 明瞭でなくなった場合、すべてのコードが同じ純正度で調整されます。その他のモード同様、「深度」 の値を100%にすると最も高いレベルで純正度が維持され、10%では純正度が最も低くなります。
  • 「Hermode Tuning(HMT)」の「深度」スライダ:エフェクト度数を0%~100%に設定できます。

いっそ英語のほうがわかりやすいかもしれんな、こりゃ。
【参考】

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