Spectrasonics “Omnisphere 2” 音色の欠損を補修

我が家の Omnisphere の音色に欠損が見えたため、補修できないか試してみました。
実はこの記事、いろいろ試して複数記事に分かれていたものを統合したもので、解決に至るまではだいぶ時間がかかってました。
予備知識が地味に大事なので、本題より先に記しておきます。

予備知識

最新版のOmnisphere 2に至るまで、Atmosphere、Omnisphereと進化していて、初代にあたるAtmosphereが発売されたのは2002年とされています(Spectrasonics – Legacy Products – Atmosphere – Dream Synth Module)。

現在、非常に多くのソフト音源が、音色データとリストとを別々に保有していて、アップデート時にはアップデートプログラムがその両方を適切に書き換えるのが基本となっています。それをユーザーが遵守しなかった場合、それによって生じた動作不良等の責任はユーザーに委ねられるのが通念です。
とはいうものの、Spectrasonicsのインストーラーも実は当初完璧ではなく、データが壊される可能性もありました。いずれにせよ、どういうタイミングでデータに異常が起きるのかハッキリしません。

Spectrasonicsでのアップデーター、オーサライゼーションの登録状況は次のようにユーザーページに表示されます。

SpectrasonicsのUpdatesページ(要ログイン)
SpectrasonicsのUpdatesページ(要ログイン)
2020年現在のSpectrasonicsのUpdatesページ(要ログイン)
2020年現在のSpectrasonicsのUpdatesページ(要ログイン)
2020年現在のSpectrasonicsのUpdatesページ(要ログイン)
2020年現在のSpectrasonicsのUpdatesページ(要ログイン)

Atmosphereのこと

  • Atmosphereの最新はMacで1.2.4, Windowsで1.2。※配布記録割愛
  • 当時の音色データはAtmosphere.datという単一ファイル。
  • アップデータが動作しないこともあるので、サポート外と考えるべき。
  • MacでOS9からOSXへの過渡期にAtmosphereやTrilogy用のWrapperがあった。
  • Macでは*.datファイルのエイリアスを利用して参照先を変更することができ、Trilogy同様。WindowsではSpectramoveを使用。

上述のとおり、MacではOS9からOSXへの大きな移行期にまたがったソフトで、SpectrasonicsはOSXへの対応にだいぶ苦労していた印象があります。ただ、OS9で素晴らしい製品を出していたのにOSXへの対応を諦めてしまったメーカーが多かった中、よくぞ乗り越えたと思っています。とはいえ、その過程で「欠損」の種が植えられた可能性が強いと個人的には考えています。

Omnisphereのこと

OmnisphereのLegacyページ(login needed)
OmnisphereのLegacyページ(login needed)
OmnisphereのUpdateページ(login needed)
OmnisphereのUpdateページ(login needed)

最新版のアップデートはおそらく累積アップデートだと思うのだけど確証がなかったので、Legacyも含めて、配布されているアップデートを古い順に並べておきます。

2009/01/26 Soundsource Library 1.0.1
2009/11/09 Patch Library 1.0.5
2009/12/31 Software 1.1.4c
2010/2/23 Software 1.2.0n
2010/3/10 Patch Library 1.2.0
2010/5/5 Patch Library 1.3.1
2010/5/14 Software 1.3.2c
2011/2/28 Patch Library 1.5.1
2011/5/10 Software 1.5.5e
2011/6/20 Software 1.5.6d
  • Omnisphereの最新SoftwareはMac, Winとも2013/12/18配布の1.5.8d、Soundsource Libraryの最新は2009/01/26配布の1.0.2。Patch Libraryの最新は2011/05/10配布の1.5.5。
  • Trilianのデータを開くことができる。Omnisphereの多彩な機能を使ってTrilianのサウンドを鳴らせるので実質Omnisphereから開いたほうが(負荷を考えなければ)便利。
  • Atmosphereから構造が変更されSTEAMフォルダに一切合財放り込まれる。音色データは*.dbという形で幾つかに分割された各単一ファイル。
    • 初期には、STEAMフォルダを初期設定以外の場所に指定しても、アップデータ実行時に初期設定場所にデータがインストールされる不具合があった気がする(不確実;こちら側の環境や手順を疑う余地もある)。
    • AtmosphereやTrilogyの頃のように*.datのショートカット/エイリアスを使うだけではデータ参照先を変更できなくなり、インストールに失敗した話もよく見かけた。
    • Omnisphere 2インストール前に、よけいなSTEAMフォルダがローカルディスクに存在していないか確認しておく必要あるかも。
  • Atmosphereを所有していなくても新たにAtmosphereのデータがSTEAM形式でインストールされたのではないか(憶測)。うっすらとした記憶では、Omnisphereが発売になった数カ月後に提供されたような気も(Trilogyだったかもしれない)。

なお、Omnisphereの6枚のインストーラの中にあるSTEAMフォルダの中身は下記の通り。

Omnisphere 2のこと

Omnisphere 2のUpdateページ(login needed)
Omnisphere 2のUpdateページ(login needed)
Omnisphere 2のLegacyページ(login needed)
Omnisphere 2のLegacyページ(login needed)

旧OmnisphereのSoundsource Libraryアップデータを古い順つまり1.0.1、1.0.2と実行した上、改めてOmnisphere 2のData Upgradeを行えば欠けは補修される…と思いきや、そうもいかない。TrilianとのカラミやMoog Tributeの拡張音源とのカラミの問題があります。
うちでは次の手順で欠損を修復できました

  1. Omnisphere(と必要ならTrilian)のディスクイメージを取っておく(トータル73GBほど)
  2. /Users/username/Library/Application Support/Spectrasonics
    のSTEAMエイリアスを削除(Preflight Scriptエラー対策;STEAMフォルダの中身は削除しない
  3. Omnisphereをインストールし、全てのアップデートを適用する(Soundsource Updateの1.0.1はエラーが出るのでスルー)
  4. (Trilianを使用している場合は)一度DAWを起動してTrilianのSTEAMディレクトリを指定してDAWを終了、TrilianのPluginのみインストールし(Soundsourceのインストールはそのままでは出来ないと思う)、Trilianの全てのアップデートを適用する
  5. Omnisphere 2のアップグレードを実行(Step3, 4など使用していないコンテンツのアップデートは実行しない)、個々のアップデートを実行。もし余計なコンテンツのアップデートをしてしまっているなら、Omnisphere 2使用中に表示されるアラートを無視するか、STEAMフォルダ内のMoog Tributeディレクトリを削除

インストーラ内に存在するSTEAMフォルダの中身をローカルにコピーして修復しようとする方法はおすすめしません。データとデータベースとの間で不整合が起き、今まで問題が無かった部分にまで問題が広がる恐れがあります。

「zmapが見当たらない」というアラートが表示されたとき、zmap一覧はOmnisphere 2の商品紹介ページで確認できるのですが、zmapがどのdbに入っているかは不明です。

Omnisphere 2のLibrary一覧
Omnisphere 2のLibrary一覧
Omnisphere 2 Download Managerが再DLされるだけ
Omnisphere 2 Download Managerが再DLされるだけ

Keyscapeの場合

Keyscapeの場合は、オプショナル・インストール・ディスク付きのパッケージで購入していれば再インストールしてアップデートすればOK。

インストーラのみの購入の場合、購入証明のメールに記されたコンテンツダウンロードは一回のみなので、そのインストール・コンテンツを保管していなくてはいけません。
保管しそこねていた場合は、購入の証明となるものと一緒にSpectrasonicsもしくは国内代理店(メディア・インテグレーション?)にコンタクトを取りましょう

うちは、Wing Pianoに対応するzmapが壊れてしまったので、ひとまず初期のインストール・コンテンツから当該のzmapをコピーして上書きしたのちにSoundsourceアップデートを適用してまともに動きました。