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【雑記】160319

かつてファジィと呼ばれたリアリティ

30年近く前に「ファジィ制御」の家電みたいなものが流行った。
ゴミを感知する掃除機が、ゴミの有無だけでなくゴミが「ややある」ときにも反応するみたいな、仕組みに幅を持たせたものだった。
シュレディンガーの何とやらっぽい話だが、悪くいえば曖昧、良くいえば柔軟ってことで、流行り言葉の多くがそうであるように日常的な事柄に対しても「ファジィだ」なんて用いられたもんだ。

デヴィッド・ボウイの音源は、なぜ音程が外れているのか? | 情熱クロスロード~プロフェッショナルの決断 | ダイヤモンド・オンライン

はっきり言って、修正するほうが無難なんです。音程が合ってるかどうかは客観的な「正解」がありますからね。悩む必要がない。それに、その「正解」に合わせるのは技術的には簡単です。しかも、そうしておけば、「間違いを残したまま、指摘も修正もせずに世に出すこのスタッフはなんなんだ」という批判を避けることができるわけです。

だけど、そうやって修正して、無難に無難に、きれいにきれいにやっていく音楽に何の意味があるのか。それならば、そもそも全部コンピュータでつくってしまえばいいじゃないか。人間がつくる必要はないという話にもなる。

(中略)

なぜ、本物の鮮明な質感を殺してまで「不自然な人工物」をつくろうとするのか。それは本人も「どこがゴールなのか」がわかっていないからです。言い換えれば、本質が見えていないからです。

音楽に限らず、今はデジタルでいくらでも加工ができる時代になりました。便利といえば便利。だけど、仕事は余計に難しくなったのではないでしょうか? なぜなら、デジタルの世界は、自分の中に確固たる「ゴール」を持っていないと、いつまでも際限なく修正できてしまうからです。そして、気が付いたら、誰の心にも響かないような「不自然な人工物」ばかりになってしまう。

音楽のゴールが聞き手の心に響くことだとすれば、重要なのは「音」がずれてるかずれてないかではない。そして、心に響くかどうかは、結局のところ、作り手が自分で判断するほかないんです。

これができないと、ゴールが「間違いのないこと」になってしまう。そして、テクノロジーを使えば、それは簡単にできてしまう。だけど、それはもはや音楽でも何でもない。ただ「外れていない」というだけの、単なる音なんです。

先に補足しておくと、たとえば音程の補正でいえばいわゆるケロ声のようにピッチ補正を行うものと、元の揺れ具合を保ってパーセンテージを指定して行えるピッチ補正とがある(ソフトウェアによって色んなタイプがあってここでは一例)。ヤギさんが仰っているのは、パーセンテージ以前に手を加えるかどうかという話、それと手を加えない状態の良さを感じ取れる美的感覚を養っておくという話。

グルーヴと呼ばれるものは正確な音符の位置からのズレに価値を認めたもの。
グルーヴの概念外、たとえば16分3連がどうしても32分気味に演奏されてしまう「味」とか、どうしても走ってしまうそこが「らしさ」だとか、これらも補正によって失われてしまう。
もっと漠然とした話では、特定の範囲だけ聞いていると下手くそだが直前から聞くとたまらない文脈となって価値を持つ場合もある。
iTunesがシャッフル再生機能を備えたとき、個別のアルバムでは冴えない曲だったものが、全く無関係な曲と並んだとたん特別な価値を持って聞こえる、なんてのもあった。
神は細部に宿る(©ミース・ファン・デル・ローエ)一方で、筆のかすれの絶妙さに「侘び寂び」を感じるのも本質的な鑑賞。
何度もいうがこれは二択でなく両立しうる。また侘び寂びが偶然の美をも認める寛容で静かな美学であることもポイント。

正確さだけ追求しても必ずしも価値を持ち得ないという意味でヤギさんの考え方に同意する。

だけれども、だ。
音楽の良し悪しを判断する根っこや土台が経験に根ざすものであれば、ふだん聞く音楽がピッチリしたものばかりである人にとっての美とは正確さだろう。そして、そうした方々が多数派になると前提が覆り得るね。タラレバの話でしかないが、それは可能性として頭に留めておきたい。

そういえば以前ペンタとメリスマと題する日記でこう書いた。

ボーカロイドとかオートチューンでこの節回しを捏造するとき、クオーターくらい音程を外したほうが気持ちよく聞こえます。不思議なもんで。とはいえ、時が経てばジャストのピッチにも自然さを感じてくるかもしれません。

またAutotuneっぽいと評される声があるみたいと題する日記ではこう書いた。

ニコ動に’歌ってみた’をアップしている歌い手さんの歌を聞いて、たぶん直してないんだろうけど直したような声質だなと思ったわけです。ロングトーンの吐息がえらく安定していたんすね。ビブラートがえらく安定している人も直したような声に聞こえるかもしれません。

‘歌ってみ’る方にとって、直したように聞こえる声質ってハンデっぽいな、と。

補正があまりにふつうになってしまったことで、卓越した技術を持つ人が割を食うなんていう逆説的な現象が起きている。
口パクを疑われてアカペラで歌ったら審査員が呆然としたなんていうオーディション番組の動画もあった(Judges stopped her because they couldn’t believe it’s her real voice! – YouTube)けれど、必ずしも審査員自身も試される審議の場が備えられているわけじゃないしね。

「侘び寂び」にあたる美を評価するのって難しい。言語化しにくい価値を「侘び寂び」と言っちゃってるからな。
先日の日記になぞらえていえばAIをしても最終課題といえるんじゃないか。わかんないけど。
その辺の文脈でいえば、いわゆるヘタウマをヘタウマと判断できる感覚って実はすごくレベルが高い
万が一にもヘタウマの極致を自覚的に表現できる者がいたら(いないこともない)、これはもうダ・ヴィンチクラスの天才だろうとすら思う。

DTMフェア開催中

紀伊国屋書店札幌本店2階奥の音楽関連書籍のコーナーにてDTMフェア開催中。BNNの書籍も良書多し。
すっかりAmazon依存の引きこもり状態だけど本屋に行くとやっぱりときめくね。
今はすっかり少なくなってしまった町の小さな本屋なんか今も好きだし、歯抜け状態の文庫の棚の、その抜けたところに何が並んでたんかなとか思う。少ない小遣いでなるべくいい参考書や問題集を買おうと時間かけて吟味したことも思い出す。

2階の奥ですね。用語辞典などと一緒に並んでます。 松前さんの本は良書。

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M3進捗

お伝えしてなかったか定かでないので重複した報告になってたらすいません。
WOM用は新曲1曲を今週末レコーディング予定で、歌詞は今まででいちばん好み。
リミックスは、今まで収録していたさまざまなリミックスとは方向性が違う。

島みやさんとこのもまたお手伝いしていて部分的に楽曲提供、編曲、ミックス、マスタリングなど担当。
いずれ告知出たら改めてRTなどできればと。

アーティスト優遇の空気が漂い始める音楽サービス

明確な言及は避けるけど、SoundCloudやiTunesがSpotifyに対抗する形なのか、著作権者を牽制して著作者を囲い込もうとする空気を感じる。
より多く支払うから作品の登録状態を確認して連絡ちょうだい、みたいな。
ま、まだ空気を醸成している段階なのと、この手のお知らせには「言い回しの妙」が潜んでいる(Appleのには既に指摘がある)ので、人柱になるもよし静観するもよしといったところ。

周期的な振り返りでたびたび気づく

この間、データ整理をしていたら10年近く前にガラケ向けに作ってた曲、それも外注になってからの制作分が出てきた。たびたび発掘してそのつどまた闇に帰すんで、何度目だって話だけど。
毎度のことながら、今こういうのは作れないなと思った。

感性が変わったのはもちろんのこと、自分だけじゃなく一般的な作り方も変わっちゃった今、当時のように力ずくな音色ねいろを作ってその一ネタで押し切るなんて、結構本気で恥ずかしくて出来なくなっちゃったな。
本気で恥ずかしいけど、だけど、カッコいい言葉でいえばアイデンティティの一角ではあったようだ。
たとえばギター1本で叫ぶように歌う人が何かの拍子に”聞かせる歌”に目覚めて、その一方で何かを失っているみたいなのと現象は近いかも。

去年の秋ごろに作って当時はまあまあと思っていた曲を改めて春に向けて再構築していた際に、当時の手法を用いてみたら思いのほか納得できる雰囲気になってきて俄然まとまり出した。
今となっては恥ずかしい手法でも自分の中では支柱/骨子の一つだったんだろう。

ブログ再建進捗状況

暇に飽かせて再建作業を進めていて、思っていたよりサーバー負荷による処理中断の影響が大きくて(表向きサイトをオープンにしっぱなしのせいもある)直した関連付けが処理落ちでまたぶっ壊れたり、やっと7,8割方再建できたかなというところ。
たいしたアクセス数もないのによくこんだけ負荷がかかるもんだと思ったけど、Wordpress自体がけっこう負荷かかるからねえ。
調べたら、今後に備えてレンサバのプラン変更するにしても、別契約して古い方を解約する段取りになってしまうらしく、再建が終わってない状態で移行するのはちと怖い。

今ひとまず他サイトのスクショをいくらか削除したり、何らかの処理で重複してしまっている画像ファイルの除去をしたりしているところ。まだまだかかりそう。

カテゴリー:雑記

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