Mammut

CDMで Mammut というスタンドアローンのエフェクトソフトが少し鼻息荒げに取り上げられています。

Mammut is free software that does completely insane things to sounds

グラフィックのこの感じが気になるってんで記事を見に行ったんですが、「こういう音になります〜」的なデモが載ってるわけでもなく説明中心で、うーむ、有意義な情報とビュー数稼げる情報との不咬合が目立つご時世だなと改めて思っとります。

周波数分布に注目した懐かしの加工手法

早い話、Mammutっていうのは周波数に着目したさまざまな加工をガチコンとまとめたもので、原音を指定して加工して保存するという…段取り的には少々煩わしい、ただし僕の世代からすると何か懐かしさ香るインターフェイスを持ったスタンドアローンのソフトウェア。
懐かしいついでに言っておくと、ProToolsで知られたDigidesignによるTurbosynthという同様のスタンドアローンアプリが昔あって、そこにFrequency Inverterみたいなモジュールがあった気がします(Blast from the past: Digidesign Turbosynth | MusicRadar の説明文にはそんなモジュールが見当たらないのですが)。

Blast from the past: Digidesign Turbosynth | MusicRadar

Blast from the past: Digidesign Turbosynth | MusicRadar

この周波数分布を逆転させて再合成する加工っての、最近はほとんど見かけません。懐かしさがこみ上げられるファクターの一つでもありそう。
この手法を使うとRing Modulatorをかけたように高い周波数が(強引に)生み出されるんで、ピッチを下げて化物っぽい音声に仕立てたときの高域の劣化感が多少紛らされます。それだけが目的じゃないんでしょうけど、たとえば金属的な声にしたいとかね。
でも多くの場合周波数分布って低域が一定で高域がばらける、これを逆転させると高域が一定になって低域がばらけてしまうわけで、原則、ただ耳障りな金切り音になってしまいがち。そんなデメリットがあるんで、使う場が限られる、もしくは腕が試されます。

Soundhack

Mammutをリリースしたのは、これまたかつてSoundhackというプラグインで一部では大変有名だった(当時は大学院生だったと読んだ記憶がある)Tom Erbe氏。
Webarchive.org見ると2001年のアーカイブが残ってますね。

www.soundhack.com

www.soundhack.com

Mac OSXになる前からエグい(褒めてる)機能を搭載したソフトを公開しておいででした。
当時のソフトのスクショ画像ももはやほとんど検索に引っかからなくなってきてますが、だいたいこんな感じの。

Mammut

まあ、なので、僕らとしては当時を追体験でき、もっと若い世代の方にとっては「あー、当時こんな面倒なことしてたのね」を体験できる代物なわけです。
だって、待たないと加工結果がわからないとか、今の時代めったにないですからね。

何をどうするのが正しいとかいう感覚は自分にはほぼないのだけど、時間のかかる加工でしか得られない効果があるという論理は正しいと僕は思っていて、今それが看過されているとしたら、飽食の時代並みのもったいなさがあるかもしれません。
そういう示唆がMammutにある…と、勝手に深読みしてみます。

肝心の操作方法

昔のお作法が分かってる方や、ふだん市販のソフトでなく業務用の便利とは言い難いソフトを使っている方には、わりあいわかりやすいと思うんで、そうでない方向けにいちおう操作方法を簡単に記しておきます。
安定性があまり高くないのでそこは要注意。

以下、上のスクショ中のナンバーに沿って、

  1. 元ファイルをbrowseボタンで指定します
  2. 処理の種類をタブから選びます
  3. 適宜設定して、Do it!ボタンで加工します
  4. Undoの履歴辿ってもいいんですが、やり直すならreloadしたほうがいいかも
  5. 畳み込み加工をするならここでもう1つのファイルを指定します
  6. 書き出し時は拡張子が付きませんが、おそらく元ファイルと同じフォーマットになると思われます

加工前と加工後の音声、こんな感じになります。

たぶんDAWなどと同時に立ち上げられないと思います。オーディオ設定がないようで、システム環境設定で設定したオーディオ出力から出力されるようではあるのですが、たとえばDAWが既に立ち上がってる状態だと出力先の奪い合いになって挙句フリーズする感じ。

同様の加工

似た類いの加工をするソフトは昔からそこそこあります。
Michael NorrisのSoundmagic Spectralに至ってはAudio Unitsで動作します。重いですけどね。

Soundmagic Spectral - Michael Norris

Soundmagic Spectral – Michael Norris

CDMで数日前にやはり鼻息荒げに取り上げられたPaulStretchも似た部類。

A free plug-in brings extreme PaulStretch stretching to your DAW

PaulXStretch extreme time stretching plugin updated to v1.0.2

古い

CDMの元記事コメント欄にもあるのだけど古いんですよね。手法が。
古いので今それを行えるソフトがあまり無くて希少価値があるってのも事実なのだけど、でもやっぱり古い。

とはいえ、グラニュラーシンセシスないしこれらのソフトで用いられているフェーズヴォコーダーの手法での「粒度」は細かくてナンボで、だから現在のパワフルなコンピュータで悠々と動作させられるのは魅力だと言えます。
ところが同時に、そうして実際に試してみると出力結果がキレイ過ぎるという問題が新たに頭をもたげてきます。PCベースの電子音楽には「荒れ」がないので不自然に聞こえるみたいな、ね。
逆接文法つなぎで申し訳ないのだけど(自分の思考ルールなのでご容赦ください)、”だけど”、今みたいな手法と環境、時代性などがアンバランスな状況下でしか得られない結果もきっとあると思うんで、それを探すためにちょっとの間、いろんな素材や手法で試しまくってみてもいいんかなと思います。

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